研究課題/領域番号 |
26290042
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
太田 智彦 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60233136)
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研究分担者 |
朴 成和 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長(課長・グループリーダークラス) (50505948)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳癌 / 治療 / BRCA1 / BARD1 / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
①野生型、②I26A(BARD1との結合を維持したままUbcH5cとのE3活性を死活した変異体)および③I26Aにさらに2カ所のミスセンス変異を加えてUbcH5c以外のE2とのE3活性も死活した変異体 (ILK)のBRCA1コンストラクトを作成した。レンチウィルスベクターを用いてDoxycyclin誘導性にBRCA1に対するshRNAと同時にこれらの変異体を発現誘導して、内因性BRCA1と変異体を置換しうるHeLa細胞株とU2OS細胞株を樹立した。これらの細胞を用いて、放射線照射後のDNA修復因子のDNA損傷部位への集積を蛍光免疫染色にてγH2AXとの共局在で解析したところ、BRCA1-ILK変異体ではRAD51の核内foci形成が抑制されていた。さらに、ヘテロクロマチンプロテイン1(HP1)ファミリーであるHP1α、HP1β、HP1γの3つの遺伝子発現を、それぞれに対するshRNAで同時にDoxycyclin誘導性に発現抑制しうるHeLa細胞株とU2OS細胞株を樹立した。これらの細胞ではBRCA1, BARD1, CtIPおよびRAD51の放射線照射によるDNA二本鎖切断部位への集積が抑制された。また、レーザー照射にて、DNA末端切除に必要なCtIPの集積は顕著に阻害されるのに対して、BRCA1のもう一つの複合体構成因子であるRAP80の集積は全く影響を受けなかった。以上より、BRCA1のE3活性はDNA二本鎖切断修復において下流の因子の集積に重要であること、HP1はDNA末端切除および相同組換え修復に必須の役割を果たしており、RAP80/BRCA1複合体はこれとは異なった経路に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Doxycyclin誘導性の細胞株など、今後の解析に必要なreagentの準備がおおむね完了していること、初期の結果として予想している結果が得られていることから、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記の細胞を用いて、DNA損傷時のChIPアッセイにて構造ヘテロクロマチン、条件的ヘテロクロマチンあるいはユークロマチンのヒストン修飾状況を解析する。 網羅的な遺伝子のサイレンシングを解析するために簡易型次世代シーケンサーを用いてChIP-シーケンス解析を行う。また、IR照射あるいはレーザーマイクロ照射後のDSBに、早期あるいは後期に集積する修復蛋白質の変化を蛍光免疫染色にて、また一本差DNA形成をnon-denature条件のBrdU染色にて解析する。DR-GFPによるgene-conversionレポーターにて相同組み替え修復能を解析する。 H3K9me領域のヘテロクロマチン・サイレンシングの状態を解析し、DNA損傷前後の変化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年1月に受理された論文の印刷代、同時期に投稿した論文にかかる費用、これらの論文のNative Checkにかかる費用に対する請求が4月以降に来ることがわかっていたため、これに必要な経費として約100万円の繰越金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
論文印刷代として約50万円、現在投稿中の論文の印刷代、約30万円、Native Checkにかかる費用として約20万円を使用する予定である。
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