研究課題
Apcのコンディショナルノックアウトマウス由来の小腸オルガノイドの培養を行い、レンチウイルスCreを導入することにより安定してヌードマウス皮下で腫瘍形成が誘導可能であることを確認した。ただし、腫瘍は径1cm程度のものが中心で、組織像では異形度が低く、腺管の破綻が顕著であった。ヒト大腸がんにおいて変異の頻度が高く、かつこれまで遺伝子改変マウスの作成により解析がなされていない数遺伝子について、Apcノックアウト後に shRNAを導入したところ、意外なことに、がんで不活性化している遺伝子にも関わらず、in vitroにおいてそのノックダウンが強い増殖抑制効果を示すものが多く認められた。このことは、正常細胞が多段階を経て癌化する過程で、蓄積する遺伝子変異が必ずしも直線的に発がんを誘導しているわけではないことを強く示唆しており、また遺伝子異常の組み合わせによる協調作用が重要な役割を果たしていることをあらためて示す結果と考えられた。そのため、Apcノックアウトオルガノイド由来皮下腫瘍を再び培養した後に遺伝子導入を行い、in vitroでの培養を短期間にした上でヌードマウスへの皮下移植を行い経過観察を行っている。また、Apc非依存的な大腸発がんを再現するためにKras活性化後に複数のshRNAを導入したところ、Apc-KOとは異なる組織像の腫瘍が得られた。したがって、本実験系はWnt依存的発がんに限らず一般的に応用可能でることが示唆された。さらに、大腸発がん物質としてしられるPhIPについて、従来マウスではリンパ腫を発症してしまい腸管発がん性の検証が困難だったが、オルガノイド実験系を用いることで、Apc不活性化後にのみ発がん促進効果がみられることを確認した。この結果は、種々の化学物質の発がん性がin vitroでも迅速に評価可能であることを示しており、有用なアッセイ系となると考えれらた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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