研究課題
PRPF19遺伝子を標的にしたsiRNAによる膵臓がんなどへの顕著な抗腫瘍効果のメカニズムを明らかにするために、(A)PRPF19 siRNA処理がん細胞におけるパスウェイ解析、(B)PRPF19 siRNAによるDNA損傷、紡錘体形成阻害に及ぼす機能解析、(C)PRPF19 siRNAによる抗腫瘍効果におけるスプライシング機能の関与の検証、について実施した。(A)については、PRPF19 siRNAを処理した正常線維芽細胞TIG-3及び膵臓がん細胞株PK-8のマイクロアレイ(東レ3D Gene)によりトランスクリプトーム解析を行った。その結果をもとに、GO解析を行ったところ、細胞周期、DNA修復経路、相同組換えの寄与が明らかになった。特に細胞周期について着目すると、p53/p21経路に違いが見られ、正常細胞ではPRPF19 siRNAによりMDMX/p53制御を介した細胞周期停止が誘導される。(B)については、コメットアッセイを行いPRPF19 siRNAによるDSBs(二本鎖切断)を観察した。そして、細胞周期に及ぼす影響をFACS及び蛍光細胞周期プローブ「Fucci」により解析すると、PRPF19 siRNAによりG2/M期に同調した後、正常細胞では細胞周期を停止するが、一方でがん細胞は多核形成やS期への進行が見られ細胞死を誘導することが示唆された。また、(C)に関しては、PRPF19 siRNAによるsororin遺伝子のpre-mRNAスプライシング異常を評価した。PRPF19 siRNAによりがん細胞ではイントロン含有産物の増加が検出されたが、正常細胞ではほとんど検出されなかった。以上、平成27年度は、PRPF19 siRNAによる膵臓がんの細胞死は、がん細胞特異的なメカニズムによって制御されうることを明らかにできた。
1: 当初の計画以上に進展している
ゲノム安定性の維持におけるPRPF19遺伝子の機能を解明し、PRPF19 siRNAの抗腫瘍効果を評価するために、PRPF19 siRNAによる細胞周期停止機構、PRPF19 siRNAによるDNA損傷、紡錘体形成阻害に及ぼす機能、がん化によるPRPF19に着目したスプライシング調節の変化、膵臓がんのゼノグラフトマウスモデルにおけるPRPF19 siRNAの抗腫瘍効果、について検証し、計画通りに進行しており論文投稿の準備を行っており、極めて順調である。
ゲノム安定性の維持におけるPRPF19遺伝子の機能を解明するために、(A)PRPF19 siRNAによる細胞周期停止機構、(B)PRPF19 siRNAによるDNA損傷、紡錘体形成阻害に及ぼす機能、(C)がん化によるPRPF19に着目したスプライシング調節の変化、(D)膵臓がんのゼノグラフトマウスモデルにおけるPRPF19 siRNAの抗腫瘍効果、について検証する。(A)PRPF19 siRNAによる正常細胞の細胞周期停止は、p53/p21経路依存的に引き起こされ、さらにp53抑制タンパク質であるMDMXの発現を減少させる。そこで、マイクロアレイやMS解析を用いてPRPF19 siRNAによるMDMX発現制御因子を同定する。(B)PRPF19 siRNA処理細胞のマイクロアレイからDNA修復経路、相同組換えの寄与が明らかになり、また、PRPF19 siRNAによりDNA損傷はG2/M期に蓄積する。これらのパスウェイとPRPF19の関連を明らかにし、紡錐体形成阻害などのゲノム不安定性における関与を解明する。(C)PRPF19はがん細胞において高発現して、PRPF19 siRNAによりがん細胞特異的にスプライシング異常が引き起こされることが明らかになった。そのため、次世代シークエンス解析を用いて、PRPF19 siRNAによりがん細胞特異的にスプライシング異常を引き起こす遺伝子を同定し、それらの細胞死に対する寄与を調べる。(D)膵臓がん細胞では10pM~100pMという非常に低濃度のPRPF19 siRNA処理によって細胞毒性を示すことが明らかになっている。膵臓がんは予後が悪く難治性がんであるため、有効な治療法が求められている。このことからPRPF19 siRNAは膵臓がんを標的とした新規核酸医薬として期待される。そのため、膵臓がんのゼノグラフトマウスモデルにおいて、生体内イメージングを用いた腫瘍増殖評価や延命効果を検討する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 3件、 招待講演 11件)
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