研究実績の概要 |
当該年度の研究により、胆道・膵臓がんの手術検体から得られた組織を用いて、オルガノイド培養技術によりがん幹細胞を永続的に培養・維持することに成功した。現在、安定的に培養・維持出来る肝内胆管がんおよび膵臓がん由来のオルガノイドを合計で3例樹立した。培養条件としては、基本培地に加え、EGF, R-spondin 1, HGF, A83-01, Wnt3A, Noggin, FGF10, Forskolinなどを添加すると、胆道・膵臓がんオルガノイドを効率良く樹立出来ることが明らかになった。 樹立された胆道・膵臓がんオルガノイドにおける個々の症例に特異的なドライバー遺伝子変異、エピゲノム変異および遺伝子発現などを網羅的に解析したところ、特に少ない増殖因子で強い増殖活性を認める胆管がんオルガノイドにおいて、KRAS、TP53、TGFBR2の遺伝子変異を認めていた。また、マイクロアレイによる遺伝子発現の網羅的解析の結果、オルガノイド培養を長期間継続していると、ゲノム全体のDNAメチル化レベルが低下し、がん抑制マイクロRNAの代表であるmiR-34aの発現が著明に低下していることが明らかになった。 樹立した肝内胆管がんオルガノイドに、GFPまたはpuromycin耐性遺伝子を含むレンチウイルスベクターにより、miR-34aを強制発現させたところ、胆管がんオルガノイドの増殖が著明に抑制されることを確認した。
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