研究課題/領域番号 |
26290050
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
地主 将久 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (40318085)
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研究分担者 |
菰原 義弘 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (40449921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腫瘍免疫 / 非小細胞肺癌 / EGFR変異 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
化学療法の治療応答性における宿主免疫調節機構の重要性が、その制御を司る責任分子やシグナル経路の解明を通して明らかにされつつあるが、抗がん内科療法の主流になりつつある分子標的療法における抗腫瘍応答や治療耐性に宿主免疫制御が果たす役割については不明な点が多い。申請者はこれまでに腫瘍組織で高発現し、かつ免疫寛容誘導を介し抗癌剤反応性を負に制御する制御因子を同定してきたが、腫瘍特異性が高くかつ特定の分子標的療法への治療抵抗性誘導に寄与する免疫制御因子の同定や機能の解明を遂行することで、より臨床応用に適した診断・治療戦略の策定が可能になると考えられる。本研究では、 肺非小細胞癌に焦点を絞り、遺伝子改変自然発癌モデルと臨床検体の解析を通して、EGFR-TKI 治療耐性変異株によりparacrineに誘導され、腫瘍免疫逃避や炎症発がんを促進する宿主免疫制御因子の同定、機能解析に取り組むこと、さらに免疫制御因子を標的とした新規診断、治療法の開発への橋渡しを目標に研究を遂行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在EGFR変異、とりわけT790M変異による腫瘍内マクロファージのM1 Profile活性とPD-1経路依存性の獲得について明らかにするなど、前年度までにEGFR変異とマクロファージ、MDSCなどミエロイド細胞の免疫原性プロファイル、免疫チェックポイント分子依存性の獲得など、その分子メカニズムの解明は大きな前進がみられた。その一方、自然発癌マウスを対象としたin vivo検証は遅れが見られるため、本年はこのin vivoにおける上記治験の妥当性の証明をフォーカスしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
1.EGFR変異と免疫チェックポイント分子阻害剤応答性の相関のin vivo検証 ミエロイド細胞とT細胞が、EGFR-TKI変異を背景とした抗PD-1抗体への治療応答性に及ぼす影響を詳細に検証するため、M-CSF 受容体(CSF1R)プロモーター制御下にてEGFPとFKBP-Fas自殺遺伝子導入された自然発癌モデルから得られた抗性肺癌細胞のOrthotropic transplantation を試行のうえ、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体 および抗TIM-3抗体など各種免疫チェックポイント分子阻害剤による抗腫瘍効果をin vivoで検証する。その際の腫瘍内免疫応答(IHCによるT細胞マーカー、免疫制御サイトカイン, IDOなど)の変動を、免疫チェックポイント分子阻害剤による治療前、治療後でチェックする。以上の解析により、免疫プロファイルの変動とEGRF遺伝子変異との相関を明らかにそ、EGFR変異群を対象とした適切な併用療法のScientific rationaleを得る。 2.宿主免疫プロファイルとEGRF変異に関するヒト検体での検証 慶応大学呼吸器内科との共同研究により、EGFR-TKIによる分子標的治療投与を受ける前後での肺小細胞癌の腫瘍組織および血清サンプルを対象とする。TAM、T細胞やPD-L1/2等抗腫瘍免疫制御因子や、それにより影響をうける免疫シグナル・カスケードに関連する遺伝子を対象に RT-PCRにて定量解析を行う。各々の結果を、治療前後および治療経過中に抗癌剤不応性を呈した時期で区分化して、特定の抗がん免疫プロファイルと再発、治療不応性、生存率との相関性について統計学的に検証する。さらに、抗がん免疫因子についてhigh/low群に分類し、生存率(全生存率、無増悪生存率および無再発生存率)を検証する。以上の検証より、ヒト肺非小細胞癌におけるEGFR-TKIへの治療応答性や生存予後において、宿主免疫が果たす臨床的意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は当初予定していた自然発癌モデル作成と検証ができず、その未使用分額で差額が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
本年は昨年度予定していた自然発癌モデルでの検証を中心に検証していくため、昨年度差額分を含めて執行する予定である。
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