研究課題
本年度は、ERK, Akt, 細胞周期のレポーター, 核のレポーターを発現するポリシストロニックベクターを開発し、HeLa細胞を用いてこれらのレポーターの評価を定量的に行った。その結果、ERK、Aktのレポーターは細胞内のERK、Akt活性を線形に可視化していること、細胞周期依存的なERKとAkt活性の変化を捉えることができた。これらの結果は現在、論文投稿中である。さらに、KRas変異癌細胞株A549細胞とBRaf変異癌細胞株A375細胞にこれらのレポーターを発現させ、MEK阻害剤、PI3K阻害剤の単剤、または併用処理における分子活性の変化と細胞死の関係について解析を進めた。これらとは別に、東大産科との共同研究で、卵巣がんのなかの粘液性腺癌に対するMEK阻害剤とPI3K阻害剤の効果をFRETバイオセンサーと数理モデルを用いて解析した。やはりKRasに変異がある細胞ではMEK阻害剤の感受性が高いこと、またERKとS6Kの活性値からANDゲートモデルを使うと、cytostaticな効果とcytotoxicな効果を予測することができることが分かった。これらの結果はOncotarget誌に受理された。
2: おおむね順調に進展している
計画書に記述した事柄についてほぼすべて順調に進展している。また共同研究の結果から数理モデル化への道筋を示すことができた。
最終年度では、ERKとAkt活性、細胞周期の入力情報からKRas変異癌細胞とBRaf変異癌細胞のMEK阻害剤の感受性の違いという出力を説明するための線形回帰統計モデル解析を行い、どのタイミングでどの分子の活性が変化することがMEK阻害剤感受性にどれほど寄与するのかを見積もる。見積もることができたら、その後は薬剤の投与タイミングをそれにあわせることでより高い抗腫瘍効果を引き起こすことができるか検討する。
H27年度は補助金、基金助成金をほぼ予定通り使用したが、基金分に関してはH26年度の使用分が残っているためにそれを最終年度にまわした。
本年度と同様に、主として物品費(消耗品)の購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
Oncotarget
巻: 未定 ページ: 未定
Oncogene
巻: 34 ページ: 5607-5606
10.1038/onc.2015.16
Blood
巻: 127 ページ: 596-604
http://dx.doi.org/10.1182/blood-2015-06-644948