研究課題
制御性T細胞により抑制されたがん抗原特異的エフェクターT細胞、特にCD8+T細胞のフェノタイプについて検討した。制御性T細胞により抑制されたがん抗原(自己抗原)特異的CD8+T細胞は、1回細胞分裂後に分裂を停止することを示した。これらの抑制されたCD8+T細胞は、ナイーブT細胞マーカーのCCR7陽性でありながら、活性化後のT細胞の様にCo-inhibitory分子(特にCTLA-4)を発現しているというユニークな特徴を有し、抗原再刺激に対して不応答(アネルギー)状態になっていた。Co-inhibitory分子をブロックする抗体では免疫不応答を解除することはできなかった。また、培養中の抗原提示細胞上の共刺激分子の発現が制御性T細胞により低下しており、制御性T細胞は抗原提示細胞を介して自己反応性T細胞を抑制していた。以上より、制御性T細胞により抑制されたがん抗原特異的エフェクターT細胞の再活性化は難しく、制御性T細胞除去下での初期の十分な免疫応答の活性化の必要性が示唆された。制御性T細胞を選択的に除去するために、腫瘍浸潤制御性T細胞の特異的分子発現を検討した。抗体による除去を目的とする細胞表面分子の同定は、以前同定したCCR4以上の特異性をもった分子は同定にはいたらず、さらに症例数を増やして検討を行っている。一方、制御性T細胞の特性に着目し、特異的な細胞内分子シグナルを同定した。制御性T細胞が他のエフェクターT細胞に比較してT細胞レセプターシグナルに依存していること等により、T細胞レセプターシグナル下流の分子および転写調節因子が標的分子となり得ることを明らかにした。これらの標的分子に対する低分子阻害剤を用いてヒト活性化型制御性T細胞の選択的除去、及びがん抗原特異的エフェクターT細胞の活性化が誘導可能であることを明らかにし、今後これらの分子の動物モデルでの検討を進める。
2: おおむね順調に進展している
研究の目的の達成にむけて初年度で制御性T細胞に抑制されたエフェクターT細胞のフェノタイプを明らかにして報告した。これらのエフェクターT細胞は回復不能で抗体により除去することが重要であるというデータも得ている。さらに制御性T細胞に関しても、すでに網羅的解析により新たな標的分子(T細胞レセプターシグナル分子および転写調節因子)の同定が終了しており、検体の集積も予定通りであることから、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
当初の計画で予定していた制御性T細胞表面に発現する分子の同定には至っていないものの、前述したようにすでに特異的なシグナル分子発現に基づき低分子製剤による阻害の可能性を明らかにしている。今後は細胞表面分子の発現をさらに検討を続ける。一方で制御性T細胞に特異的な分子(T細胞レセプターシグナル分子および転写調節因子)に対する低分子製剤がマウスモデルで活性を有することを確認しており、これらの製剤の前臨床試験を進め、制御性T細胞の腫瘍局所での選択的除去およびそれに伴うがん抗原特異的エフェクターT細胞の効果的な活性化について検討を進める。その際、腫瘍局所、局所リンパ節、脾臓などでがん抗原に対する特異的CD8+T細胞の誘導、細胞傷害活性およびT細胞疲弊マーカーの変化を明らかにしていく。
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