研究課題
メトホルミンのCD8 T細胞のエネルギー代謝、即ち解糖系と酸化的リン酸化に及ぼす影響を明らかにした。脾臓から精製したナイーブCD8 T細胞をメトホルミンで短時間処理を行い、これを抗CD3抗体および抗CD28抗体、あるいは抗CD3抗体単独で刺激培養して記憶T細胞へと分化させた。培養3日目におけるT細胞のエネルギー代謝について、乳酸産生に伴うpHの低下(ECAR)を指標に解糖系を評価した。また、酸素消費速度(OCR)を指標に酸化的リン酸化を評価した。本実験は細胞外フラックスアナライザーを用いて行った。抗CD3抗体単独刺激の場合は、メトホルミンによりECARおよびOCRがともに亢進した。一方、抗CD3抗体および抗CD28抗体刺激培養の場合は、最初からECARおよびOCRが上昇しており、メトホルミンの効果は認められなかった。また、OCR/ECAR比の低下がメトホルミン前処理かつ抗CD3抗体単独刺激の場合に見られたが、抗CD3抗体および抗CD28抗体刺激培養の場合には見られなかった。CD28刺激は解糖系を亢進させることがわかっているが、メトホルミンはその効果を部分的に模倣できる可能性が示唆された。ある一定の条件下、例えば腫瘍内で樹状細胞が少ない場合などCD28刺激が入りにくい場合でも、メトホルミンによって解糖系を亢進させることができる可能性がある。CD8 T細胞はTCR刺激により、ナイーブ → エフェクター・メモリー(TEM)→ セントラル・メモリー(TCM)へと分化が進むが、メトホルミンにより長くTEMに留まるが、解糖系阻害剤2-DGを加えると容易にTCMへと分化した。即ち、メトホルミン存在下では、より解糖系が亢進し、TEMの状態が長く続ことになる。TEMは腫瘍内ではTCMよりも強いエフェクター作用を有しているため、以上の事実はメトホルミンによる代謝制御と抗腫瘍効果の関係を示すものと思われる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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