研究課題
一般に、固形癌の組織中には、マクロファージを始めとするミエロイド系免疫細胞の浸潤が認められる。ヒトのiPS細胞から増殖能力を有するミエロイド系細胞(iPS-ML)を作製する方法を開発している。この方法により、生理的なヒトのマクロファージに近い性質を有する細胞の大量生産が世界で初めて可能となった。本研究は、この技術を、がん治療へ応用する事を目的としている。iPS-MLは、M-CSFの存在化で長期間増殖する一方、IL-4を添加して培養すると数日で樹状細胞に分化する性質を有している。また、scidマウス腹腔内にヒトの胃癌あるいは膵臓癌細胞を生着させた腹膜播種癌モデルにおいて、iPS-MLを腹腔内投与すると腫瘍組織内への集積と浸潤が認められる。さらに、IFN-βを発現させたiPS-MLの投与により、scidマウス腹腔内に生着したヒト腫瘍に対する治療効果を認めた。以上の研究成果に基づき、iPS-MLおよびiPS-ML由来の樹状細胞を用いて、難治性癌の代表である胃癌腹膜播種と膵臓癌に対する治療法の開発をめざし、基礎的な検討を行なっている。また、マウスの多能性幹細胞に由来する増殖性ミエロイド細胞に由来する樹状細胞(マウスES-ML-DC)の特性解析、および、ES-ML-DCによる能動免疫法によるがん治療についての検討も行なっている。マウスの担癌モデルを用いて、ES-ML-DCによる細胞ワクチンが有効であるという結果も得ている。
2: おおむね順調に進展している
IPS-ML作成技術の改良、動物モデルを用いた薬効薬理解析、造腫瘍性の検討等を行い、概ね予定した通りの成果を挙げる事ができた。
iPS-MLをエフェクターとするがん治療の実用化へ向けて、開発を加速させて行きたいと考えている。研究代表者らは、「医薬品医療機器法」における再生医療等製品として承認を得る事を目指しており、安全性と薬効を確認するための非臨床試験の実施、および、細胞製造抗工程の改良と確立等の課題に取組まなければならない。
開発研究を継続して実施する必要がある。
マウスを用いた薬効薬理解析等によりさらなるPOC(Prooof of Concept)を得るよう開発を進める。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
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