研究課題
(1)天然物由来の化合物ライブラリーから、ヒトtriple-negative breast cancer (TNBC)細胞株MDA-MB-468及びMDA-MB-231のTRAILに対するアポトーシス感受性を亢進するものとしてピペリンを見出し、マウスTNBC細胞株4T1担がんマウスにおいてピペリンがTRAIL受容体であるDR5に対するアゴニスト抗体の抗腫瘍効果を増強することを示した。(2)担がん状態の免疫抑制に関わるmyeloid-derived suppressor cells (MDSC)においては、ERストレスによってTRAIL受容体であるDR5の発現が亢進しており、DR5に対するアゴニスト抗体がMDSCの除去にも有用であることを示した。(3)MLL-AF9誘発性のマウス急性骨髄性白血病(AML)モデルにおいて、Notch2に対するアゴニスト抗体が、Hes1を介したFLT3発現抑制によって、AML細胞にアポトーシスを誘導することを示した。(4)B16-F10マウスメラノーマモデルにおいて、抗CTLA-4抗体と抗RANKL抗体の組み合わせによって、相乗的に肺転移が抑制されることを示した。(5)Notch1及びNotch2を介した刺激は、グルコース取り込みの調節によって、メモリーT細胞の維持に関わることを示した。(6)CT26マウス大腸がんモデルにおいて、4-1BB (CD137)に対するアゴニスト抗体とPD-1に対する阻害抗体の組み合わせによって相乗的な抗腫瘍効果が得られることを示した。(7)がん局所で産生されるVEGF-AがCD8 T細胞の消耗に関わるPD-1やTim-3の発現を増強することを見出し、抗PD-1抗体によってVEGF-Aの免疫抑制が解除されることを示した。(8)養子移入したセントラルメモリーT細胞が宿主の寛容誘導性樹状細胞によって不活化される状況においても、抗PD-1抗体によってその抗腫瘍活性が増強されることを示した。(9)種々のヒト白血病細胞を直接的に傷害するpan-MHCII抗体を樹立した。(10)新規免疫チェックポイント分子VISTAに対する抗体を樹立し、その抗腫瘍活性を検討した。
3: やや遅れている
がん細胞に免疫原性細胞死を誘導する抗体療法としては、抗DR5抗体への感受性を高める新たな化合物を発見するとともに、抗DR5抗体が免疫抑制性細胞(MDSC)の除去により免疫増強にも働くことを明らかにした。また、Notch2に対するアゴニスト抗体が急性骨髄性白血病の治療に有用であることを示すことができた。免疫増強抗体療法としては、既存のCD137に対するアゴニスト抗体やPD-1に対する阻害抗体などの組み合わせの評価とともに、新たな免疫抑制分子VISTAに対する抗体を樹立し、順調に進展している。しかしながら、所属研究機関の動物実験施設の改装のため、一部の動物実験の進展が予定より遅れている。
がん細胞に免疫原性細胞死を誘導する抗体療法としては、既存の抗DR5抗体や抗Notch抗体等の評価を進めるとともに、RELTなどの新たな標的に対する抗体の作製を行う。免疫増強抗体療法としては、既存のPD-1等に対する抗体の評価を進めるとともに、TIGIT等の新たな標的に対する抗体作製を行う。一部の動物実験については、新たな動物実験スペースを確保して、遅れを取り戻したい。
所属研究機関の動物実験施設の改装のため、一部の動物実験を翌年に繰り越す必要が生じた。
新たな動物実験スペースを確保して、昨年度分の動物実験も遂行の予定である。
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