研究課題/領域番号 |
26290060
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
永瀬 浩喜 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究所長 (90322073)
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研究分担者 |
渡部 隆義 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究員 (60526060)
越川 信子 千葉県がんセンター(研究所), がん遺伝創薬研究室, 研究員 (90260249)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がんドライバー遺伝子変異 / 変異遺伝子標的治療 / ピロールイミダゾールポリアミド / アルキル化剤 / マイナーグルーブバインダー / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
様々ながんドライバー遺伝子(KRAS, ALK, PIK3CA, MYCN, BRAF)の変異に対するアルキル化ピロールイミダゾールポリアミド(PIP)化合物の設計合成を行い、機能評価を行った。先行するKRAS G12C,G12V変異標的化合物KR12については、標的特異的なアルキル化と発現抑制、さらに細胞レベルとヒト大腸がん移植マウスモデルで標的KRAS変異をもつ大腸がん特異的な強い抗腫瘍活性が確認され、成果はNature Communications誌に報告した。またMYCNを標的とした化合物でMYCNA3では遺伝子コピー数の増加(Amplification)にも、良好な成績が得られた。KR12およびMYCNA3に関してはAMEDより助成金をいただき、導出に向けた非臨床試験が行われ、安全性、薬効に良好な結果が得られ、国内外で同出に向けた取り組みをAMEDの指導で行ている。さらにALKの点変異に対する化合物も変異をもつ神経芽腫で抗腫瘍効果が強くみられ、PIK3CAも変異を持つ子宮頸がんでの強い抗腫瘍効果が確認できた。非臨床での薬物動態を検討する過程で、PIPの腫瘍集積性滞留性が確認され、がん特異的な副作用の少ない薬剤として開発できる可能性が示唆された。さらに薬剤が結合する配列をビオチンラベルした化合物でアフィニティー沈降し、網羅的に次世代シークエンサーで解析するChemSeq法が確立し、薬剤の設計においてゲノム情報を事前に情報処理することで最適な化合物を設計デザインできる可能性が示唆せれた。この結果はChemistry誌で査読中である。様々な配列認識アルキル化PIPを合成し、その薬効、薬理を詳細に検討し、ゲノム情報と発現プロファイル解析からアルキル化PIPによるテーラーメイド医療への道筋がより現実味を帯びてきたエキサイティングな成果が得られた年であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題で合成された化合物で良好な抗癌活性が得られたため、臨床応用に向けた取り組みがAMEDの援助のもと進められるようになり当初計画以上のスピードで非臨床試験を行うことが出来た、さらにいくつかの臨床応用に向けたハードルを越える必要があるが、今後も国の援助により創薬開発が進められ、薬剤の導出に向け計画以上に進呈していくことを期待している。また同様のプラットフォームから次々に薬剤の開発が可能であり今後のさらなる日本発の創薬開発技術として発展していくことを期待している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、リードコンパウンドとして確立された化合物については順次、導出に向けた取り組みを他の補助金や企業との連携で進めることを模索している。残念ながら平成28年度は、未だ十分な予算確保が出来ていないが、何らかの形で研究費を獲得しそれぞれの化合物の導出に向けて努力を続ける。さらに、本課題では臨床応用に注力するのではなく、化合物の設計やデザインを工夫していくことと様々な化合物の薬効機能評価を地道に続けて行くことで、現在解ってきた、ゲノム配列への特異的結合性の特徴と腫瘍集積性の獲得等の機序を解明し、より最適なリード化合物をインシリコで導き、簡便に自動合成する技術を確立する研究を継続する。このことでアンメットながん症例にも将来、有望な薬剤(抗腫瘍効果が強く副作用の少ない薬剤)を確実に出来るだけ早く届けられるようになると考え研究に専心していく。このことが今後の研究推進方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイオインフォーマティクス解析のために雇用予定であったポスドクの採用時期が初年度遅れたため、その人件費が繰り越している。解析が遅れたため最終年度にもバイオインフォーマティクス解析を進める必要があり、この繰り越しを最終年度の解析のための人件費に充てる。
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次年度使用額の使用計画 |
化合物のゲノム上の結合部位の網羅的な解析および遺伝子発現の網羅的解析を既存のデータベース上のゲノム情報を取り入れてバイオインフォーマティクス解析を行う必要がありこの解析を行うポスドクの雇用費用に充て、最終年度に解析結果を論文報告する計画である。
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