研究課題
真核生物の線状染色体末端のテロメアに隣接するサブテロメアの機能や制御機構を解析した。3本しか染色体を持たない分裂酵母の特徴を活かして、すべてのサブテロメア共通配列を削除することによって、それらの生理学的機能を探ることにした。本研究で用いた分裂酵母株には、合計5つのサブテロメア共通配列が存在していることがわかったため、それらすべてを破壊した株、SD5株を作製した。これまでに、サブテロメア共通配列がサブテロメアヘテロクロマチンの領域決定に重要であることを示した。さらに、サブテロメア共通配列以外の領域も破壊したところ、サブテロメアとユークロマチン領域の境界でヘテロクロマチンの侵入がブロックされることがわかった。その境界ではヒストンのゲノムDNA局在が激減していたため、クロマチンのboundaryとして機能している可能性が示唆された。SD5株の他の表現型を見出すため、テロメアDNAも欠失させたところ、多くの細胞は致死となったが、生き残る細胞が見られた。それらの細胞の染色体状態を解析したところ、多くの場合、サブテロメア共通配列以外の部分で染色体自己環状化を起こしており、高頻度に異染色体末端融合が見られた。そのような染色体では、一方の染色体のセントロメアコア領域にヘテロクロマチンが侵入してセントロメア不活性化されていることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
着実にデータが出ており、近いうちに論文にまとめる予定である。
今後は、サブテロメアとユークロマチンのバウンダリーの機構をさらに調べていく予定である。また、サブテロメア共通配列に含まれていると思われるバウンダリー配列についても、詳細に解析していく予定である。
現在、サブテロメア領域の遺伝子発現を指標にした変異株の解析を進めている。その変異株の取得が予想以上に困難であり、遅くなったため、当初予定していた変異株の解析が次年度に持ち越されることになった。そのため、その解析に必要な実験にかかる費用を次年度に使用することにした。
各変異株における実際の遺伝子発現を測定するため、逆転写酵素、realtime PCR用試薬、Northern解析用試薬を購入する。また変異遺伝子の変異部位同定のためにテトラド解析が必要となるが、そのためのニードルも購入する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件)
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