研究課題/領域番号 |
26290065
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
新里 宙也 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 研究員 (70524726)
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研究分担者 |
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
中島 祐一 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 研究員 (50581708)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | サンゴ / 集団遺伝 / 南西諸島 / ゲノム / SNP |
研究実績の概要 |
地球規模での環境変動によりサンゴ礁が壊滅的な打撃を受けており、早急な対策と保護が求められる。本研究はサンゴの全ゲノム情報を駆使し、豊かな生物多様性を誇る南西諸島のサンゴ個体群の全容を、超高精度に明らかにすることを目的とする。本研究は、全ゲノムが解読されており、膨大な量のDNA上の一塩基多型、SNP(Single Nucleotide Polymorphism)情報が利用可能で、ゲノムレベルでの詳細な集団解析が可能なコユビミドリイシ(Acropora digitifera)を主な対象種としている。 沖縄県周辺のコユビミドリイシの詳細な155個体を採捕し、それぞれの全ゲノムをGA IIx、HiSeq(Illumina)を用いてリシークエンスを行った。得られた塩基配列データを参照ゲノムにマッピングし、個々のサンゴ個体から約90万ヶ所のSNPを特定し、集団解析を行った。全地点間での遺伝的距離(Fst)はとても小さく、ほぼ同一集団と推定された。その一方で、主成分分析では沖縄本島・慶良間諸島・八重山諸島北・八重山諸島南の4つのクラスタが確認され、島嶼間での移動は頻繁には起こっていない可能性が示唆された。過去のサンゴの加入パターンを推定したところ、八重山から沖縄本島への過去の加入の痕跡が検出され、沖縄本島のサンゴの集団形成には八重山地方のサンゴが過去に大きな役割を果たしたことが示唆された。これらの結果は学術論文として公表した。 ミドリイシサンゴは南西諸島域で最も普通に見られるサンゴであるが、これまでに次世代シークエンサーとバイオインフォマティクス解析により、ミドリイシサンゴ以外の造礁サンゴ、アザミサンゴ(Galaxea fascicularis)についてもマイクロサテライトマーカーを開発し、南西諸島周辺の集団解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
沖縄周辺のコユビミドリイシの詳細な集団構造を、全ゲノムSNP解析により明らかにし、学術論文として公開できた。ミドリイシ以外のサンゴについても遺伝子マーカーの開発と集団解析について学術論文として公開することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後も全ゲノムSNPデータを用いた詳細なサンゴの集団解析を進めていきたいと考えている。一方で、南西諸島には400種以上の造礁サンゴが生息している。南西諸島のサンゴ礁の全容を把握するためには、様々な種の集団構造の情報も必要になる。ミドリイシ属サンゴに汎用性があるマイクロサテライトマーカーの開発を行い、実際に多数の種において使用できることを確認したので、このマーカーを用いて、南西諸島の代表的なサンゴの一つであるミドリイシ属サンゴの南西諸島全域での集団遺伝学的解析を進め、南西諸島のサンゴの個体群の全容を把握したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
材料採集のために他の島嶼地域のサンプリングを計画していたが、天候不良などで実現できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでに材料採集を行えなかった地域での材料採集を行い、次世代シークエンサーを用いたゲノム解析を行う予定である。
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