研究課題/領域番号 |
26290067
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
加藤 規弘 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, その他 (80293934)
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研究分担者 |
並河 徹 島根大学, 医学部, 教授 (50180534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム / マイクロアレイ / 遺伝子 / エピゲノム / mRNA |
研究実績の概要 |
ゲノムワイド関連解析などの探索的ゲノム解析により見いだされてきた遺伝子座/染色体領域の、責任遺伝子の同定の可否〔Genomic approach〕、および遺伝子発現変化等の機序の解明〔Non-genomic approach〕について、両アプローチを組み合わせた、代謝関連疾患の統合的理解を研究目的とする。大きく以下の3つの課題に取り組む。 課題1. 代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるexpression-QTL (eQTL:QTLは量的形質遺伝子座の略称)の探究:インスリン抵抗性のモデルである高血圧自然発症ラット (SHR)系統と対照のWistar Kyotoラット(WKY)系統間で、主要な遺伝的効果を示す、代謝関連疾患形質の責任遺伝子座(positional QTL:pQTLと略)の近傍領域に関して、(1)SNPの系統分布様式、(2)遺伝子発現量の系統差、を調べる。 課題2. エピゲノム(DNAメチル化)の検討:ゲノムワイドなDNA methylation arrayを用いて、腎臓、肝臓、脂肪の組織間でのDNAメチル化の違いを検討する。その際、(1)「geneticとepigenetic variantsが親から子の世代に一緒に受け継がれるかどうか」を組織別に調べる。(2)代謝関連疾患に関わる介入(食塩負荷、高脂肪食負荷、及び糖質コルチコイド負荷)に伴う、遺伝–環境相互作用としてのepigeneticsの意義を検討する。 課題3. microRNA (miRNA)の変動と分子ネットワークの探究:ゲノムワイドなRat miRNA microarrayを用いて、DNAメチル化解析と同様、組織間での発現プロフィールの違いを検討する。その際、miRNA(とその標的配列)の多型が代謝関連疾患形質のpQTL本体であるかどうか、および遺伝–環境相互作用におけるmiRNAの意義を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べた通り、本研究では大きく3つの課題に取り組んでいる。 課題1〔代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるeQTLの探究〕に関しては、初年度に主に取り組み、SHRとWKY間の実験的交配系(F2世代)で同定した血圧、血糖、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸)、体重、相対心重量などのpQTL近傍領域に関して、両progenitor系統間でのeQTLの絞り込みを行った。さらに、pQTLが集積するラット染色体1番に関して作成した、一連のコンジェニック系統を用いて、pQTLとeQTLの異同を調べた結果、特定の遺伝子座/染色体領域においては、一つでなく複数のeQTLが存在し得ることなどが実証された。 課題2〔DNAメチル化の検討〕と課題3〔miRNAの変動と分子ネットワークの探究〕については、解析すべき組織検体(progenitor系統の通常餌飼育下と介入に伴う、脳、肝臓などのDNA・miRNA)各々のmicroarray実験を行った。同実験での大きなテーマは、(1)食事負荷、薬物負荷(stress hormoneであるdexamethasone)の有無に伴う、同一ラット(SHR)での遺伝子発現、epigenetic(miRNAとDNAメチル化)変化、及び(2)特定染色体領域(4SW2:SHRにWKY由来の~15Mbの染色体断片を入れたコンジェニック系統)と特定遺伝子(CETP)の有無(通常食飼育下の条件)に由来する、遺伝子発現とDNAメチル化の変化、の検討である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、主に課題2と課題3の部分を実施し、その上で当研究課題の総括を行う。 課題2〔DNAメチル化の検討〕では、12週齢のSHR系統とWKY系統(N=5ずつ)から摘出した組織を用いて、MeDIP (methylated DNA immunoprecipitation)で抽出した高品質DNAをRat DNA methylation arrayにhybridizationした結果に基づき、DNAメチル化の系統差を調べる。特にラット染色体4番に関しては、複数の主要なpQTLが同定され、詳細に(7系統)コンジェニック系統が作成されているため、これらのコンジェニック系統でも遺伝子発現量を適宜調べて、trans eQTLの影響の有無を確認すると共にDNAメチル化への影響も調べる。SHR系統で、食事(食塩および高脂肪食)介入を12週齢から16週齢までの4週間、薬物(dexamethasone)介入を12週齢からの3日間行い、介入前後でのDNAメチル化と遺伝子発現の変化をゲノムワイドに調べる。 課題3〔miRNAの変動と分子ネットワークの探究〕では、DNAメチル化の解析と同様、15K Rat miRNA Microarray (Agilent社製)を用いて、miRNA発現プロフィールの系統差、主要なpQTL及びeQTLとの重なりの有無、介入に伴う変化を調べる。組織間での発現プロフィールの違いを検討すべく、主に脳と肝臓を解析対象とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本年度のmicroarray実験をに予定通り進めていたが、DNAメチル化の解析において、データ解釈ソフトの検討に時間を要し、その実験手順がやや予定より遅れて、次年度にまとめて実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度分の研究費と合わせて当初予定のmicroarray実験を行う。
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