ゲノムワイド関連解析などの探索的ゲノム解析により見いだされてきた遺伝子座/染色体領域の、責任遺伝子の同定の可否〔Genomic approach〕、および遺伝子発現変化等の機序の解明〔Non-genomic approach〕について、両アプローチを組み合わせた、代謝関連疾患の統合的理解を研究目的とする。大きく以下の3つの課題に取り組む。 課題1. 代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるexpression-QTL (eQTL:QTLは量的形質遺伝子座の略称)の探究:インスリン抵抗性のモデルである高血圧自然発症ラット (SHR)系統と対照のWistar Kyotoラット(WKY)系統間で、主要な遺伝的効果を示す、代謝関連疾患形質の責任遺伝子座(positional QTL:pQTLと略)の近傍領域に関して、(1)SNPの系統分布様式、(2)遺伝子発現量の系統差、を調べる。 課題2. エピゲノム(DNAメチル化)の検討:ゲノムワイドなDNA methylation arrayを用いて、腎臓、肝臓、脂肪の組織間でのDNAメチル化の違いを検討する。その際、(1)「geneticとepigenetic variantsが親から子の世代に一緒に受け継がれるかどうか」を組織別に調べる。(2)代謝関連疾患に関わる介入(食塩負荷、高脂肪食負荷、及び糖質コルチコイド負荷)に伴う、遺伝-環境相互作用としてのepigeneticsの意義を検討する。 課題3. microRNA (miRNA)の変動と分子ネットワークの探究:ゲノムワイドなRat miRNA microarrayを用いて、DNAメチル化解析と同様、組織間での発現プロフィールの違いを検討する。その際、miRNA(とその標的配列)の多型が代謝関連疾患形質のpQTL本体であるかどうか、および遺伝-環境相互作用におけるmiRNAの意義を検討する。
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