研究課題/領域番号 |
26290071
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古澤 力 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00372631)
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研究分担者 |
堀之内 貴明 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 特別研究員 (60610988)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 進化実験 / 抗生物質 / 次世代シーケンサ |
研究実績の概要 |
近年大きな問題となっている抗生物質耐性菌の出現を抑制するためには、その進化ダイナミクスを理解し、制御する必要がある。そこで本研究では、進化実験で得られた様々な抗生物質耐性の大腸菌株について、その表現型と遺伝子型を定量したデータに基づき、その耐性獲得への進化ダイナミクスを制御する手法を開発する。単独の抗生物質に対する耐性菌の表現型・遺伝子型データから、複数の抗生物質を同時に添加したときの進化ダイナミクスを予測し、進化実験を行うことによって検証する。さらに、抗生物質に限らず様々な環境摂動を与えて進化実験を行い、耐性獲得ダイナミクスに影響を与える摂動のスクリーニングを行う。これらのデータを統合することにより、薬剤耐性の進化ダイナミクスを制御する手法を開発する。 平成27年度は、前年度までに取得した2種類の薬剤を同時に添加した環境下で得られた耐性株について、そのゲノム変異を同定し、それを親株ゲノムに導入することにより、耐性への影響を評価した。結果として、さまざまな耐性獲得に寄与する変異を見出すことに成功し、またそれら複数の変異を同時に親株ゲノムに導入することにより、その寄与がおおよそ加法的に寄与することが示された。また、2種類の薬剤を同時に添加することにより、耐性獲得が抑制される場合と加速される場合があることが見出されていたが、後者に関しては変異率の上昇によって耐性獲得が加速されていることが示唆された。さらに、これらの解析と並行し、抗生物質や酸・アルカリ・重金属など100~200種類といった多数のストレスをそれぞれ添加した環境下での大腸菌進化実験を開始し、データ取得の準備が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2種類の薬剤を同時に添加した環境での進化実験が完了し、またその進化過程においてゲノム変異がどのような影響をおよぼしているかを定量的に評価することに成功している。また、多数の抗生物質やストレス環境下での大規模の進化実験を開始することに成功しており、28年度にデータを取得する準備が完了している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、多数の抗生物質や酸・アルカリ・重金属などの環境摂動を与えた場合の大腸菌進化実験を行い、耐性株を取得する。これら耐性株について、ある環境Aへの耐性株が他の様々な環境への耐性・感受性をどのように変化させるかを系統的に解析し、耐性・感受性がトレードオフの関係となる環境摂動の組み合わせを抽出する。またそうしたトレードオフの関係にある環境変化を同時に与えた場合の進化実験を行い、進化ダイナミクスがどのように変化するかを定量する。これらのデータを統合することにより、薬剤耐性の進化ダイナミクスを制御する手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
多数の環境摂動を与えた場合の進化実験の実施に遅れが生じ、その進化実験によって得られたサンプルの次世代シーケンサによるゲノム変異解析やマイクロアレイによるトランスクリプトーム解析の実施について、必要な試薬の購入を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
購入を延期した次世代シーケンサ解析、マイクロアレイ解析の試薬などの購入に充てる。
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