研究課題/領域番号 |
26290072
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
高須 正規 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (00503327)
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研究分担者 |
楠田 哲士 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (20507628)
土井 守 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (60180212)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本在来馬 / 在来家畜の保存 |
研究実績の概要 |
これまでの研究期間を通じて,木曽馬,与那国馬,宮古馬,対州馬,御崎馬のゲノムサンプルが得られた。また,これに加え,他の機関との連携によって,残る在来馬のゲノム解析が進められる体制が整った。 これら一連の研究によって,保存活動が活発になった。与那国馬では,ゲノム解析で基礎的な情報が得られたことから,本格的に血統登録事業が開始された。対州馬においては,地域が本格的に遺伝子資源として対州馬を保全する方策を模索し始める動きが現れた。加えて,御崎馬では関係団体との連携が進んだ。 在来馬における疾病疫学調査も進められた。感染症は集団を絶滅に追いやるリスクの1つであり,ここを把握できたことは今後の在来馬保全に重要な意味を持つこととなった。 これまで進められてきた在来馬保全のための生物学的アプローチだけでなく,地域の遺伝子資源として在来馬を考える社会科学的なアプローチがすすめられた。ここでは,木曽馬の保存に関わる人々の認識を聞き取った。木曽馬の保存に関わる人々も木曽馬の保存における一番の問題は生まれる子馬の数が少ないことと理解していた。同時に,これを解決するためにはどこでどのように子馬を生産していくかという問題を解決しなければならないことが明らかになった。 平成28年度の研究では,モノとしての在来馬を保存するだけなく,それを取り巻くステークホルダーを理解しつつ,その保存を進めていく必要があることが確認できた。本研究の最終年度となる平成29年度は,得られた知見を統合し,在来馬の保全とは何かを論考する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
希少ウマ科動物からの採材は困難を極めている。このため,本研究では日本在来馬の保存研究を統合的に進めることとした。 希少動物の保存を含めた環境保全を進めるにあたって,それに関わるステークホルダーを無視することは拙速な結果を招く。このため,早急に結果を求めるのではなく,在来馬の持続可能な保存に向けた解を探る必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,申請研究のまとめとして,8種の在来馬保全ネットワークの構築を進め,持続可能な在来馬保全の基礎を構築する。 このためには,まず在来馬の生物学的な特徴の理解をすすめる。それぞれの在来馬における保全遺伝学的情報を比較し,品種の近縁性を明確にする。特に沖縄の在来馬は他の馬種とは異なる特徴を有していることが示唆されたため,遺伝情報からこれを明確にする。また,木曽馬で得られた保全繁殖学的な知見を他の在来馬の関係者へ伝え,それぞれの地域における保存活動の活発化を促す。 次に,在来馬の社会学的な特徴の理解をすすめる。平成28年度に行った木曽馬の保存に関わる人々の理解に関する研究から,木曽馬の保存における一番の問題は生まれる子馬の数が少ないことであり,これを解決するためにはどこでどのように子馬を生産していくかという問題を解決しなければならないことが明らかになった。本年度はこれを解決すために,関係者との議論を進めるとともに,木曽馬はどのような資源となり得るかを調査する。この木曽馬の保全社会学を今後の在来馬保全の社会学的アプローチのモデルとなる。 以上をまとめ,本研究で自然科学と社会科学を統合した「在来馬の保全論」とでも言うべく分野を開拓する足掛かりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画が若干遅れているため,予定していた経費を使用する必要がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画をキャッチアップし,データ解析のために用いる。
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