研究実績の概要 |
1.本研究課題では、T. gondii UPRTを組織特異的に発現するトランスジェニック線虫を作製して4-チオウラシル(4-TU)添加により新生RNAを生体で組織特異的に標識・濃縮するTU-tagging法の確立を目指していたが、線虫ではショウジョウバエや哺乳類と異なり、UPRTを発現していない野生型株でも短い標識時間で4TUが全身に効率よく取り込まれてしまい、計画どおりに新生RNAを組織特異的に標識できなかったため、研究期間を延長してこの問題の解決に努めた。線虫のウラシル代謝経路の酵素遺伝子の変異体を取り寄せ、4TUが新生RNAに取り込まれにくい変異体をスクリーニングして、それらの二重変異体でさらにUPRTを組織特異的に発現する線虫株を作製したが、それでも短い標識時間で4TUが効率よく全身の新生RNAに取り込まれてしまった。一方、抗がん剤でもある5-フルオロウラシルが線虫に対して毒性を示すには食餌の大腸菌の代謝酵素が関わっていると報告された(Cell 169: 442, 2017)ことからその変異体大腸菌株を取り寄せて与えてみたが、やはり短い標識時間で4TUが効率よく全身の新生RNAに取り込まれてしまった。そこで、このプロジェクトについては後継の科研費課題で引き続き条件検討を行うこととした。 2.線虫のトロポミオシンをコードするlev-11遺伝子のスプライスバリアントを詳細に解析し、エクソン7aを含む新たなアイソフォームとしてLEV-11Oを同定し、頭部体壁筋でのみ発現することを論文として発表した。また、lev-11遺伝子の他のアイソフォームの組織発現分布についても解析し投稿中である。 3.線虫のmRNAプロセシング制御(組織特異性、発生段階依存性、ノンコーディングmRNAの産生と品質管理による発現量の制御、遺伝学的解析方法、他の生物との比較など)についての総説を発表した。
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