研究課題
UVSSAは、転写共役ヌクレオチド除去修復 (TC-NER)開始時の転写型RNA pol IIoのユビキチン化反応に関与していると考えられる。そこで、UVSSA依存的なRNA pol IIoのユビキチン化部位を決定するため、SILAC代謝標識システムを利用することとした。本解析の結果、UVSSAに依存してUV照射により誘導されるRNA pol IIoのユビキチン化サイトを同定することに成功した。この結果に基づいて、本ユビキチン化サイト特異的にユビキチン化が起こらない変異型RNA pol IIを発現するノックイン細胞を作製し、それぞれのTC-NERの活性や、UV照射前後のRNA pol IIoのユビキチン化状態の詳細およびRNA pol IIoの分解状態とその分解速度等の検討を進めている。また、in vitroユビキチン化反応解析中にUVSSAが自己ユビキチン化されることを見出した。このUVSSAの自己ユビキチン化サイトに関して、変異体を作成し、TC-NERへの影響やRNA pol IIのユビキチン化および分解との関連など細かく解析を行った。一方、UVSSAの機能解明を目的としたUVSSA蛋白質の結晶構造解析では、UVSSAの一部ドメインの結晶化と構造解析に成功した。この結果得られた機能性と予想される部位の情報をもとに、各種変異体の作成を実施し、細胞レベルでの検証を行っている。さらに、全長のUVSSA蛋白質の精製も完了し、現在結晶化スクリーニングを実施している。
2: おおむね順調に進展している
SILAC代謝標識システムを利用して、UVSSA依存的なRNA pol IIoのユビキチン化部位の同定を試みた。正常細胞とUVSSA欠損細胞をLightとHeavyのアミノ酸で標識し、細胞抽出蛋白質をトリプシン消化後に抗di-Glycine抗体でユビキチン由来のペプチドを濃縮した後、高分解能オービトラップ質量分析装置で同定・解析を行なった。その結果、UVSSAに依存し、かつUV照射により誘導されるRNA pol IIoのユビキチン化サイトを同定した。このユビキチン化部位のリシンをアルギニンに変異させることで、特定のユビキチン化が制限された変異型RNA pol IIを発現する遺伝子改変細胞を作成し、細胞レベルでの検証を実施している。UVSSAが自己ユビキチン化する部位のアミノ酸変異体は、UVSSA欠損細胞のTC-NER活性を相補することができず、変異体UVSSAを発現する細胞ではUV照射後のRNA pol IIoの分解速度が速くなっていた。UVSSAの結晶構造解析では、一部ドメインの結晶化・構造解析に成功し、全長UVSSA蛋白質は結晶化スクリーニングの段階に入っている。以上のように、これまでUVSSAがRNA pol IIoのユビキチン化およびその分解サイクルに重要であることを示してきたが、その作用機序解明に迫るためのデータが着々と蓄積している。
これまでに、TC-NERに関わる因子UVSSA、CSA、CSB、USP7、Cul4A-DDB1-Roc1-CSA E3 ligaseなどを精製している。また、ユビキチンとE1/E2 ligase (ubcH1~ubcH13)についても入手しており、これらの蛋白質標品を使用してin vitroのRNA pol IIoユビキチン化反応の再構成を行なう。またRNA pol IIoのUVSSA依存的なユビキチン化部位を同定し、ユビキチン化を制限した変異型RNA pol IIを発現する遺伝子改変細胞を作製した。本細胞を用いてより詳細な検証を行うとともに、本ユビキチン化部位特異的な抗体や遺伝子改変動物の作製を進めており、細胞から個体レベルまでを対象とした、より詳細な調査に挑む。
UV照射後のRNA pol IIoのユビキチン化サイトに関して、TC-NERに必須の修飾部位の同定に成功した。本研究目的をより精緻に達成するため、遺伝子改変細胞・動物モデルを用いて、生化学的研究成果の検証・解析を加える必要性が生じた。遺伝子改変細胞・動物実験の準備には時間を要するため、予定していた研究費を次年度に繰り越し、本年度得られた生化学的研究成果を検証するために、遺伝子改変細胞・動物モデルでの解析費および消耗品費として使用することとした。
UVSSA依存的なRNA pol IIのユビキチン化機構に関して、より詳細な検証を実施するための消耗品費として使用する。特にRNA pol IIのユビキチン化部位特異的な抗体作製および、遺伝子改変細胞・動物モデルの作製・解析費用に充当する予定である。
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