研究実績の概要 |
繊毛虫テトラヒメナには、ひとつの細胞内に、大核・小核という構造と機能の異なる2種類の核が存在する。本研究は、核膜孔複合体の分子あるいは構造が、核機能分化に関与する仕組みとその構造的基盤を明らかにするものである。前年度に引き続き、次の2項目の解析を行った。 項目1)大小核の核膜孔複合体(NPC)を構成する全ヌクレオポリンを同定することで、大小核の核膜孔の構造的な違いを分子レベルで明らかにすることが目的である。これまでに、マススペクトル解析に加え、インシリコの実験を行うことにより、新たなクレオポリン候補タンパク質を同定した。それらの候補タンパク質のGFP融合タンパク質をテトラヒメナで発現し、既知のヌクレオポリンとの共局在性から新規ヌクレオポリンを同定した。GFP融合タンパク質の蛍光量を測定し、大小核に特異的なあるいは偏在するヌクレオポリンを明らかにした。大小核に特異的なヌクレオポリンとしてMacNup214, MicNup214, MacNup153, MicNup153, Pom121, Pom82を同定した。Pom121とPom82については、免疫電子顕微鏡法による解析を行い、核膜孔のどの位置に存在するか決定した。これらの解析によって、大小核NPCの構造的な違いを明らかにした。 項目2)受精後の核が大小核へ分化する過程を生細胞イメージングで解析し、核膜孔と核分化との時空間的な関係を明らかにすることが目的である。項目1)で発見された因子が分化に関与する可能性を探るために、受精後の核が大小核へ分化する過程を生細胞イメージング法で解析した。その結果、新規に発見したヌクレオポリンのひとつが、核分化に先立って分化予定核に出現することを見いだした。このヌクレオポリンの、核分化における役割を明らかにするために、遺伝子ノックアウト株の作製を行い、その表現型を解析した。
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