研究課題/領域番号 |
26291008
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 良和 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 准教授 (20374225)
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研究分担者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (40311518)
加藤 公児 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (30452428)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | X線結晶解析 |
研究実績の概要 |
イカなどの軟体動物はヘモシアニンという超巨大蛋白質会合体をもちいて,酸素運搬を行っている.ヘモシアニンは,その大きさを利用して,ハプテンのキャリア蛋白質やワクチンの免疫賦活剤として利用されている.このように応用研究に用いられる一方で,これまで,X線結晶構造解析による高解像度での構造解析は成功していないため,詳細な構造は明らかになっていなかった.本研究では,X線結晶構造解析により,分子量4MDaにも及ぶ超巨大なヘモシアニン会合体の原子構造を決定する事を目指す. 前年度までに,スルメイカ由来ヘモシアニンの3.0Å分解能の結晶構造解析を行った.ヘモシアニンは円筒状の外壁と,5つの内部領域から構成される巨大なD5対称性をもつ蛋白質会合体であることがあきらかになった.一方で,内部領域の構造については,一部の領域に立体障害がある上,モデルを構築していない部分にも有意な電子密度があり,更には,異常散乱差フーリエマップも観測されるという,構築した構造モデルでは説明のつかない問題点が存在していた.平成27年度は,ドメインの構成を詳細に確認し,異常散乱差フーリエマップ等も利用しながら,内部ドメインの構造解明を目指した.その結果,ヘモシアニンの内部ドメインはC5の対称性を持った会合体であるが,結晶中ではそれらが上下ランダムな方向でパッキングしているため,D5の対称性を持った分子のように見えるという事がわかった.これらの結果をまとめて,Structure誌に成果を発表した. 更に,無酸素状態でのヘモシアニンの結晶化に成功し,8Å分解能のX線回折データを収集した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は,前年度までに決定した構造の問題点を修正し,正しい構造を計算する事ができた.さらに,無酸素状態での結晶化にも成功しており,概ね順調に研究は進んでいると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
脱酸素型ヘモシアニンの結晶は十分な分解能のデータが得られていない.今後は,結晶化条件を最適化し,良質な結晶を得るよう努める.また,酸化型ヘモシアニンの内部ドメインについては,立体障害により明らかにできていない部分があるため,その構造をあきらかにするために,複数のコンフォメーションが混在しないような結晶化条件を探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,脱酸素型ヘモシアニンの結晶を得るために,嫌気チャンバー内でカラムクロマトグラフィーを行うための一連の設備を整える必要があると考えていたが,既存のものを使う事で十分な成果が得られたため,その分の費用238万円を平成28年度へと繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
嫌気チャンバー内に設置された既存の機材(遠心分離機,カラム等)は,経年劣化により状態が悪化しており,次年度以降,新しいものへと交換する必要がある.繰り越した費用は,チャンバー内の物品の整備に利用することを計画している.
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