研究課題
Maelstrom(Mael)は核酸結合モジュールであるHMGドメインと機能未知のMAELドメインから構成されるタンパク質であり、トランスポゾンの抑制とpiRNAの生合成に関与する。MAELドメインはトランスポゾン抑制に重要な役割をもつことが明らかになっていたが、その立体構造および生化学的な機能は不明だった。われわれはショウジョウバエ由来MaelのMAELドメイン(DmMAEL)の結晶構造を決定し、DmMAELは既知のヌクレアーゼファミリーに類似したRNase H様フォールドをもつ一方、活性残基(DEDDhモチーフ)をもたないことを明らかにした。生化学的解析の結果、DmMAELは1本鎖RNAを特異的に切断するRNaseであることが明らかになった。さらに、カイコ由来MaelのMAELドメイン、および、マウス由来MaelのMAELドメインもDmMAELと同様のRNase活性をもつことを明らかにした。これらの結果から、Maelは進化的に保存されたRNaseであることが示唆された。構造情報にもとづき複数のDmMAEL変異体を調製し、生化学的解析を行い、RNase活性に関与するアミノ酸残基を同定した。さらに、東京大学 塩見研究室との共同研究により、ショウジョウバエ卵巣由来培養細胞を用いた細胞生物学的解析を行い、DmMAELのRNase活性はトランスポゾン抑制には関係していないことを明らかにした。最近、マウス精巣においてMaelはpiRNA経路因子やpiRNA前駆体と複合体を形成し、piRNA生合成に関与していることが報告された。これらの結果を総合し、マウスにおいてMaelのRNase活性がpiRNA生合成に関与するというモデルを提唱した。以上の研究成果をCell Reports誌において発表した。さらに、Cas9を応用した転写活性化ツールの開発に成功し、Nature誌において発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
Maelstromの構造・機能を世界にさきがけてCell Reports誌において発表し、さらに、Cas9を応用した転写活性化因子をNature誌において発表したため。
piRNA経路の中核因子であるPIWIに関して、結晶構造解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 4件)
Nature
巻: 517 ページ: 583-588
10.1038/nature14136
Cell Reports
巻: 11 ページ: 1-10
10.1016/j.celrep.2015.03.030