研究課題
PIWIタンパク質は動物の生殖組織に発現し、piRNA(PIWI-interacting RNA)とpiRISC(piRNA-induced silencing complex)を形成し、トランスポゾンに由来するRNAを抑制することによりゲノム情報を次世代に正確に伝える役割を担う。本研究では、piRISCの作動機構の解明をめざし、カイコに由来するPIWI(Siwi)の結晶構造解析を推進した。抗Siwi抗体を固定化したセファロース担体を用いてBmN4細胞抽出液からSiwiを回収し、サーモリシン処理を行い、Siwiのコア領域を単離し、カラムクロマトグラフィーにより高純度に精製した。変性ゲル電気泳動の結果、精製したSiwiには約28塩基長の内在性のpiRNAが結合しており、Siwi-piRISCを形成していることが明らかになった。Siwi-piRISCを結晶化し、その結晶構造を2.4Å分解能で決定した。Siwiは4つのドメイン(N,PAZ,MID,PIWI)とそれらをつなぐリンカードメイン(L0,L1,L2)から構成され、2つのローブ(N-PAZローブとMID-PIWIローブ)からなる構造をとっていた。piRNAの5′末端および3′末端は、それぞれMID/PIWIドメインおよびPAZドメインに結合していた。Siwiは1位にU塩基をもつpiRNAに結合することと一致し、5′末端にはUに対応する電子密度が観察された。SiwiとhAgo2の構造比較から、各ドメインの構造は似ている一方、MID-PIWIローブに対するN/PAZドメインの配置が顕著に異なることが明らかになった。これらの構造の違いは、両者の機能的な違いを反映していることが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
Siwi-piRISCの結晶構造を決定し、Cell誌に発表したため。
Siwi-piRISCの異なる状態の構造決定を行い、その作動機構を明らかにする。
次年度のX線回折実験に用いるサンプル調製のため。
培地、実験用試薬の購入。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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