研究課題/領域番号 |
26291012
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三木 邦夫 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10116105)
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研究分担者 |
渡部 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50432357)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 成熟化タンパク質 / X線結晶解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,[NiFe]ヒドロゲナーゼの成熟化過程で過渡的に形成されるHypタンパク質複合体などを中心に構造解析を行い,成熟化過程の分子機構を明らかにすることを目的としている. HypAB複合体のSECカラムを用いた結合実験によって,ATPγS存在下で両者が複合体を形成することが分かった.この結果を基に複合体サンプルを調製し,1.7 A 分解能での結晶構造を決定することができた.HypAB複合体は,HypA二分子HypB二分子のヘテロ四量体を形成していた.HypBと複合体を形成することで,HypAは大きく構造変化しており,HypAのHis98がN末端に接近していた.その結果,単独のHypAには存在しなかったNi結合部位がN末端に形成されており,その部位にNiが結合していることも確認できた.等温滴定型熱量測定により,HypAは複合体を形成することで,Niに対する親和性が約600倍上昇することが分かった. HyhL-HypA複合体については,結晶化条件やクライオ条件の最適化を行い,3.7 A 分解能の回折強度データを収集することができた.さらに分解能の向上を目指している. Thermococcus kodakarensisの菌体抽出液から,Ni供給タンパク質としての候補タンパク質を探索した.Strepタグ付きHypBを作成し,菌体抽出液とHypBおよびHypAB複合体との反応サンプルをタグ精製することによって,HypB(HypAB複合体)と結合するタンパク質を検索した. HybD(申請書のHycIより名称変更)の大腸菌を用いた大量発現系を構築し,精製方法を確立した.HybD単独の結晶構造を1.8 A 分解能で決定することに成功し,決定された構造から金属結合部位を予想した.並行して,HyhL-HybD複合体の結晶化も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HypAB複合体の構造を 1.7A 分解能で決定することができ,Ni結合部位を特定することができた.また,明らかにした構造を基に生化学的解析にも取り組み,HypAB複合体がNiを捉えるメカニズムを解明した.HyhL-HypA複合体については,3.7 A 分解能のフルデータを収集することができた.HybDについても,1.8 A 分解能で構造を決定することができた.
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今後の研究の推進方策 |
HyhL-HypA複合体については,引き続き結晶化条件や測定条件の検討を行い,より高分解能なデータ収集を目指す.他のHypタンパク質複合体についても,その調製・結晶化ならびに構造解析に取り組む.引き続きNi供給タンパク質の候補タンパク質を検索する.HypAを用いた結合実験や,ゲノム情報を用いたNi結合モチーフの検索にも取り組む.HybD-HyhL複合体については,HyhLのC末端ペプチドを用いることも含めて,引き続き結晶化条件を検索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究での基幹的な要素である放射光利用によるX線回折の実験において,放射光施設の運転時間削減によって本年度の最終3か月間の実験が不可能になった.そのため,本年度はタンパク質試料の調製に専念し,その結晶化の一部は次年度に行うこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の放射光X線回折実験の機会に合わせて,すでに調製したタンパク質の結晶化を行い,X線回折実験を実行する.また,より新鮮なタンパク質試料を得るため,その調製も併せて行う.タンパク質の調製ならびに結晶化,そのX線結晶構造解析に必要な経費に使用する計画である.
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