新開発活性解析法を用いた新規ジアシルグリセロールキナーゼ関連経路の同定と機能制御

2014 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 26291017
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 坂根 郁夫 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10183815)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: ジアシルグリセロールキナーゼ / ホスファチジルコリン / ホスホリパーゼC / ミリスチン酸 / 歯状回 / アポトーシス / 双極性障害 / 糖尿病

研究実績の概要

「研究の目的」，「研究実施計画」に沿って幾つかの興味ある知見が得られた．
目的・計画Ⅰ-1（新規ジアシルグリセロール(DG)代謝経路の探索・同定）：まずDGキナーゼ（DGK）δに関して検討した．DGKδは主に飽和脂肪酸のみを含有するDG分子種(30:0, 32:0, 34:0(2本の脂肪酸の和))に選択性を示した．DGKδがホスファチジルコリン特異的ホスホリパーゼC（PC-PLC）と相互作用することが判明し，DGKδが利用するDGは新規のPC-PLC経路によって供給されることが強く示唆された．以上の結果は，DGKδはPI由来のアラキドン酸(20:4)を含むDGではなく他の経路由来のDG分子種を基質にすること，即ち，これまで誰も想定していなかったPI代謝回転とは独立した「新規シグナルグリセロ脂質代謝系」の存在の可能性を示している．
目的・計画Ⅰ-2（新規DG代謝経路の生理機能・調節機能）：1. DGKαの活性化機構として，カルシウム結合に伴いDGKαのEFハンドモチーフの構造が変化し，それによってC1ドメインとの分子内相互作用が弱まることを報告した．2．DGKα特異的阻害剤のがん細胞の死滅やT細胞の活性化に対する顕著な効果を明らかにした．3．2型糖尿病と連関するDGKδの発現量をオレイン酸（18:1）が減少させ(半減)，逆に，ミリスチン酸（14:0）が増加させる(倍増)ことを見出した．4．病態との関連を探る第一歩としてDGKδとηの脳での発現を明らかにした．DGKδは海馬と歯状回にも強い発現がみられた．DGKηは歯状回での発現がCA領域に比べ非常に強く，CA3領域ではほとんど検出されなかった．5. DGKη-KOマウスは双極性障害の躁状態に類似する表現型を示した．
目的・計画Ⅱ（DGKアイソザイム特異的な活性制御剤の開発）：幾つか大きな進捗はあったが特許の関係等から公表は控えたい．

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実施計画の11項目の内，5項目（45％）で顕著な進捗があった．まだ，進捗が見られない項目についても，それらの困難性は概ね解決しつつある．

今後の研究の推進方策

まだ顕著に進捗していない項目を中心に推進して行く．また，進捗のあった項目についても更に前に進める．

研究成果

• [雑誌論文] Expression and localization of type II diacylglycerol kinase isozymes δ and η in developing mouse brain (2015)
  • 著者名/発表者名: Usuki, T., Sakai, H., Shionoya, T., Sato, N. and Sakane, F.
  • 雑誌名: J. Histochem. Cytochem. 巻: 63 ページ: 57-68
  • DOI: 10.1369/0022155414559130
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Distinct expression and localization of type II diacylglycerol kinase isozymes δ, η and κ in mouse reproductive organs (2015)
  • 著者名/発表者名: Shionoya, T., Usuki, T., Komenoi, S., Isozaki, T., Sakai, H. and Sakane, F.
  • 雑誌名: BMC Dev. Biol. 巻: 15 ページ: 6 (10 pages)
  • DOI: 10.1186/s12861-015-0055-z
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Diacylglycerol kinases η1 is a high affinity isozyme for diacylglycerol (2015)
  • 著者名/発表者名: Komenoi, S., Takemura, F., Sakai, H. and Sakane, F.
  • 雑誌名: FEBS Lett. 巻: in press ページ: 未定
  • DOI: 10.1016/j.febslet.2015.03.032
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Both the C1 domain and a basic amino acid cluster at the C-terminus are important for the neurite and branch induction ability of DGKβ (2014)
  • 著者名/発表者名: Kano, T., Kouzuki, T., Mizuno, S., Ueda, S., Yamanoue, M., Sakane, F., Saito, N., and Shirai, Y.
  • 雑誌名: Biochem. Biophys. Res. Commun. 巻: 447 ページ: 89-94
  • DOI: 10.1016/j.bbrc.2014.03.113
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] EF-hand motifs of diacylglycerol kinase α interact intra-molecularly with its C1 domains (2014)
  • 著者名/発表者名: Yamamoto, T., Sakai, H. and Sakane, F.
  • 雑誌名: FEBS Open Bio 巻: 4 ページ: 387-392
  • DOI: 10.1016/j.fob.2014.04.003
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Regulation of diacylglycerol kinase δ expression in C2C12 skeletal muscle cells by free fatty acids (2014)
  • 著者名/発表者名: Sakiyama, S., Usuki, T., Sakai, H. and Sakane, F.
  • 雑誌名: Lipids 巻: 49 ページ: 633-640
  • DOI: 10.1007/s11745-014-3912-9
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Diacylglycerol kinase δ phosphorylates phosphatidylcholine-specific phospholipase C-dependent, palmitic acid-containing diacylglycerol species in response to high glucose levels (2014)
  • 著者名/発表者名: Sakai, H., Kado, S., Taketomi, A. and Sakane, F.
  • 雑誌名: J. Biol. Chem. 巻: 289 ページ: 26607-26617
  • DOI: 10.1074/jbc.M114.590950
  • 査読あり / 謝辞記載あり
• [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼηはジアシルグリセロール高親和性のアイソザイムである (2015)
  • 著者名/発表者名: 米野井優，堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第57回日本脂質生化学会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2015-05-28 – 2015-05-29
• [学会発表] 神経分化時に産生されるホスファチジン酸分子種とその産生酵素の同定 (2015)
  • 著者名/発表者名: 水野 悟，坂根郁夫
  • 学会等名: 第57回日本脂質生化学会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2015-05-28 – 2015-05-29
• [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼαの選択的活性阻害化合物の同定 (2015)
  • 著者名/発表者名: 劉可，国井奈央子，佐藤麻由，白井康仁，坂根郁夫
  • 学会等名: 第57回日本脂質生化学会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2015-05-28 – 2015-05-29
• [学会発表] Diacylglycerol kinase α as an ideal therapeutic target for refractory cancer (2015)
  • 著者名/発表者名: Sakane, F.
  • 学会等名: 88th annual Meeting of the Japanese Pharmacological Society
  • 発表場所: Nagoya
  • 年月日: 2015-03-18 – 2015-03-20
  • 招待講演
• [学会発表] 糖尿病性腎症改善薬開発のための新規ジアシルグリセロールキナーゼα活性化剤のスクリーニング (2015)
  • 著者名/発表者名: 林大輝，劉可，上田修司，山之上稔，坂根郁夫，白井康仁
  • 学会等名: 第88回日本薬理学会大会
  • 発表場所: 名古屋
  • 年月日: 2015-03-18 – 2015-03-20
• [学会発表] Diacylglycerol kinase δ phosphorylates phosphatidylcholine-specific phospholipase C-dependent, palmitic acid-containing diacylglycerol species in response to high glucose levels (2015)
  • 著者名/発表者名: Sakai, H. and Sakane, F.
  • 学会等名: 6th International Conference on PLA2 and Lipid Mediators (PLM2015)
  • 発表場所: Tokyo
  • 年月日: 2015-02-10 – 2015-02-12
• [学会発表] Expression and Localization of Type II Diacylglycerol Kinase Isozymes δ and η in the Developing Mouse Brain (2015)
  • 著者名/発表者名: Usuki, T. and Sakane, F.
  • 学会等名: 6th International Conference on PLA2 and Lipid Mediators (PLM2015)
  • 発表場所: Tokyo
  • 年月日: 2015-02-10 – 2015-02-12
• [学会発表] Diacylglycerol kinases η1 is a high affinity isozyme for diacylglycerol (2015)
  • 著者名/発表者名: Komenoi, S. and Sakane, F.
  • 学会等名: 6th International Conference on PLA2 and Lipid Mediators (PLM2015)
  • 発表場所: Tokyo
  • 年月日: 2015-02-10 – 2015-02-12
• [学会発表] 雌雄生殖器における II型ジアシルグリセロールキナーゼアイソザイム, δ, η, κの発現部位の同定と組織内発現分布の解析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 塩谷貴生，臼木貴子，堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] II型ジアシルグリセロールキナーゼのプレクストリン相同ドメインとリン脂質の相互作用 (2014)
  • 著者名/発表者名: 久米愛子，竹下依那，堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] 発達中マウスの脳におけるII型diacylglycerol kinaseアイソザイムδ及びηの発現と局在 (2014)
  • 著者名/発表者名: 臼木貴子，堺弘道，塩谷貴生，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼδはホスファチジルコリンに由来するパルミチン酸含有ジアシルグリセロール分子種を選択的にリン酸化する (2014)
  • 著者名/発表者名: 堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] Cold shock-trigger factor系を用いたジアシルグリセロールキナーゼα, δ, ηの発現・精製と活性測定 (2014)
  • 著者名/発表者名: 竹村文花，米野井優，佐藤優里子，堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] 神経分化誘導時に産生されるホスファチジン酸およびリゾホスファチジン酸分子種の解析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 水野悟，堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] ジアシルグリセロールキナーゼδのモノアシルグリセロールキナーゼ活性 (2014)
  • 著者名/発表者名: 藤優理子，堺弘道，水野悟，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-18
• [学会発表] 脂質代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼδ、ηの酵素学的性質解析 (2014)
  • 著者名/発表者名: 米野井優，堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第87回日本生化学会大会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2014-10-15 – 2014-10-15
• [学会発表] ルコース刺激時におけるジアシルグリセロールキナーゼδのパルミチン酸含有ジアシルグリセロール分子種の選択的代謝 (2014)
  • 著者名/発表者名: 堺弘道，坂根郁夫
  • 学会等名: 第56回日本脂質生化学会
  • 発表場所: 東大阪
  • 年月日: 2014-06-06 – 2014-06-07
• [図書] 疾患モデルの作成と利用―脂質代謝異常と関連疾患 下巻 (2015)
  • 著者名/発表者名: 坂根郁夫
  • 総ページ数: 413 (293－302)
  • 出版者: エル・アイ・シー
• [備考] 千葉大学大学院理学研究科基盤理学専攻化学コース生体機能化学研究室
  • URL: http://biofunction.chem.chiba-u.jp/bfc/Top_Page.html