今後の研究の推進方策 |
昨年度構造を決定したYidCの構造情報に基づく機能解析と,YidCを含む複合体の構造解析を進める。 YidCの機能解析:YidCによる膜組込みや膜シャペロンとして機能する分子メカニズムの解明を目指し,YidC単独の構造情報を基盤とした機能解析を開始させる。申請者らは同一生物種T.t. のSecY複合体, SecA, SecDFの構造を決定し,機能解析の系を組んでいる。T.t. YidCの精巧なホモロジーモデルを作製し,機能解析へと進める。構造情報は機能解析が進んでいる大腸菌のYidCや枯草菌YidCの解析にも適用させる。構造に基づき種々の変異体を作製し,遺伝学的・生化学的解析ならびに分子動力学的解析を進め,YidCが介助するタンパク質膜組み込み機構を解明する。YidCは他のSecタンパク質などと複合体を形成するが,その詳細な相互作用とメカニズムについては不明であるため,Secタンパク質との複合体の構造情報が必要である。 YidCとSecタンパク質複合体の精製,結晶化:YidCは,SecYEGやSecDFと相互作用していることが示されている(Nouwen and Driessen et al., 2002; Sachelaru et al., JBC 2013)。YidCの分子メカニズムの完全理解の為には,これら巨大な複合体の解析が欠かせない。大腸菌 SecYEG, SecDF, YidC は同時に過剰発現させることができ(Bieniossek et al., Nat. Methods 2009),大腸菌 SecYEG-SecDF-YidC 複合体は,適切な界面活性剤を選択すれば単離できる(Duong & Wickner,1997,EMBOJ.)。同様の手法によりT.t. 由来YidCと,Secタンパク質を同時に大腸菌に過剰発現させ,精製する系を組む。様々な界面活性剤を検討し,安定に複合体を精製できる条件を探索する。状況に応じて,それぞれの構造情報と生化学的なデータに基づき,ジスルフィド結合などによる架橋によって複合体を安定化させ結晶化する手法(Inaba et al., Cell 2006; Saitoh et ai., EMBO J 2007)も用いる。安定に複合体を単離できれば,結晶構造解析を進める。
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