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2015 年度 実績報告書

主要栄養シグナルを感知・統合するTORキナーゼ複合体ネットワーク

研究課題

研究課題/領域番号 26291024
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

塩崎 一裕  奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (00610015)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード細胞情報伝達機構機構
研究実績の概要

本研究では、真核生物細胞で保存されたTarget of Rapamycin (TOR)キナーゼ含む2つの複合体、TOR complex 1および2 (TORC1およびTORC2) がこれら2種類の栄養シグナル(窒素源、および炭素/エネルギー源であるグルコース)を感知・統合し、増殖をコントロールする細胞内情報処理ネットワークを構成することを明らかにする。
われわれは最近、分裂酵母において、TORC2が細胞外グルコースに応答して活性化し、基質であるGad8キナーゼをリン酸化・活性化することを報告した (Hatano et al., 2015)。TORC2の制御サブユニットであるSin1は、その中央部にあるConserved Region in the Middle (CRIM)が直接Gad8を認識し、結合する。われわれは、TORC2の基質認識特異性を決定しているSin1のCRIMドメインの構造をNMRによって決定し、ユビキチン様の折りたたみ構造をもっていることを示した。
さらに、分裂酵母で見出されたSin1の機能がヒトでも保存されているかを検証するため、ヒト培養細胞株においてSIN1遺伝子座をCRSPR/Cas9システムを用いて破壊したところ、ヒトTORC2の基質であるAKTのリン酸化に欠損がみられ、さらにCRIMドメインに変異をもつSin1をこの株で発現させてもAKTのリン酸化は部分的にしか回復しなかった。加えて、ヒトSin1 CRIMドメイン断片がAKTに特異的に結合することを試験管内実験によって示すことができた。以上の結果は、ヒトTORC2 (mTORC2)においても、Sin1サブユニットが基質結合サブユニットとして機能し、Sin1のCRIMドメインが基質特異性を担っていることを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒト培養細胞を用いたSin1 CRIMドメインの変異導入解析は、当初、ゲノムSIN1遺伝子由来の野生型Sin1タンパク質の共存下で試みたものの、変異型タンパク質の機能評価が困難であり、CRSPR/Cas9システムを用いたゲノムSIN1遺伝子のノックアウトを行うことにした。その結果、変異型Sin1の機能欠損の程度をTORC2基質AKTのリン酸化のレベルで測定可能になった。分裂酵母からヒトまで保存されたSin1 CRIMの基質認識ドメインとしての機能を報告する論文を最近、投稿することができた。

今後の研究の推進方策

グルコースで活性化されるTORC2に対し、アミノ酸などの窒素源はTORC1によって感知されている。最近の報告では、哺乳類細胞におけるGタンパク質RhebによるmTORC1の活性化はリソソーム膜で起こると提案されており、アミノ酸刺激に応答してmTORC1をリソソーム膜に局在させる機構が報告されている。同様のTORC1制御機構が分裂酵母でも保存されているかを検討し、さらにそのようなメカニズムがTORC2活性の影響を受けているかどうかを明らかにする。予備的な実験結果によると、分裂酵母ではGタンパク質二量体 Gtr1-Gtr2がTORC1の活性制御に関わっていることが明らかになっている。これと相同なRagA/B-RagC/D二量体が、哺乳類細胞においてmTORC1をリソソームに局在させるモデルが提唱されており、TORC1の活性制御機構は分裂酵母からヒトまで保存されている可能性が高い。

次年度使用額が生じた理由

H27年度は、現在投稿中の論文 (Tatebe et al. 2016)の準備のために、特に酵母の実験に注力したため、消耗品などが当初予定より低く抑えられた。

次年度使用額の使用計画

H27年度の成果を基に展開する次年度の生化学実験やヒト培養細胞を用いた実験に必要な消耗品を中心に使用する計画である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] College of Medicine, Drexel University/University of California, Davis(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      College of Medicine, Drexel University/University of California, Davis
  • [雑誌論文] Fission yeast Ryh1 GTPase activates TOR complex 2 in response to glucose.2015

    • 著者名/発表者名
      Hatano, T, Morigasaki, S, Tatebe, H, Ikeda, K, and Shiozaki, K
    • 雑誌名

      Cell Cycle

      巻: 14 ページ: 848-856

    • DOI

      10.1080/15384101.2014.1000215

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] (1)H, (15)N and (13)C resonance assignments of the conserved region in the middle domain of S. pombe Sin1 protein2015

    • 著者名/発表者名
      Kataoka, S, Furuita, K, Hattori, Y, Kobayashi, N, Ikegami, T, Shiozaki, K, Fujiwara, T, Kojima, C
    • 雑誌名

      Biomol. NMR Assign.

      巻: 9 ページ: 89-92

    • DOI

      10.1007/s12104-014-9550-6

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Target of Rapamycin (TOR) signaling from and to vacuoles/lysosomes2016

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Shiozaki
    • 学会等名
      Progress 100: Second International Symposium: Protein Trafficking and Intracellular Signaling of Plant and Fungal Cells
    • 発表場所
      九州大学( 福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-02-08 – 2016-02-09
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Regulation and function of the two Target Of Rapamycin (TOR) complexes2015

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Shiozaki
    • 学会等名
      日本分子生物学会・日本生化学会 合同大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場( 兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] Rag GTPase二量体によるTOR複合体1経路の抑制は分裂酵母の増殖に重要である2015

    • 著者名/発表者名
      福田 智行、建部 恒、塩崎 一裕
    • 学会等名
      日本分子生物学会・日本生化学会 合同大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場( 兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] Negative regulation of TOR complex 1 by heterodimeric Gtr1-Gtr2 GTPases2015

    • 著者名/発表者名
      Tomoyuki Fukuda, Hisashi Tatebe, Kazuhiro Shiozaki
    • 学会等名
      The 8th International Fission Yeast Meeting
    • 発表場所
      生田神社会館( 兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-06-21 – 2015-06-26
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Genetic dissection of Target of Rapamycin (TOR) signaling in cellular growth response to nutrients2015

    • 著者名/発表者名
      Kazuhiro Shiozaki
    • 学会等名
      HiHA 4th Workshop
    • 発表場所
      広島大学( 広島県東広島市)
    • 年月日
      2015-06-19
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      http://bsw3.naist.jp/courses/courses304.html

  • [備考]

    • URL

      http://bsw3.naist.jp/shiozaki/

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-27  

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