研究課題
電位作動性Ca2+チャネル(voltage-gated Ca2+ channel = VGCC)の研究は、主にヒトやマウスなどの興奮性細胞(神経細胞、筋細胞など)に存在するVGCCを対象として行われ、その構造と機能、一部の補助サブユニットの役割などが明らかにされてきた。しかし、VGCCは動物だけに存在するのではなく、酵母やカビなど、非興奮性の細胞にも存在するが、その構造と機能などはほとんど分かっていない。本研究では、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のVGCCのポア形成α1サブユニットのホモログ(Cch1)およびα2/δサブユニットのホモログ(Mid1)に焦点を当て、両者間の相互作用とMid1によるCch1の活性化機構を解明することを目的とする。平成27年度は、前年度までにMid1との相互作用に重要であると特定されたCch1タンパク質のドメインIIIに注目して研究を行った。方法としては、ドメインIIIだけに突然変異が生じるように、この部分だけをMn-PCR法で増幅した後、完全長のCCH1遺伝子を作製した。次にそのCCH1遺伝子でcch1欠損株を形質転換した。この形質転換体群のうち、CCH1の機能を持てない株を選択し、機能できないCCH1遺伝子のドメインIII領域の塩基配列決定により、変異部位を特定した。この方法により、10数箇所の変異部位を見出している。今後、これらの変異型Cch1タンパク質がMid1タンパク質と相互作用をするか否かを共免疫沈降法で調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
上記「研究実績の概要」でも述べたが、前年度までにMid1との相互作用に重要であると特定されたCch1タンパク質のドメインIIIに注目して研究を行った。その結果、ドメインIII領域内のloss-of-functionの変異部位を複数特定することができた。今後、これらの変異型Cch1タンパク質がMid1タンパク質と相互作用をするか否かを共免疫沈降法で調べる予定である。
Cch1タンパク質のドメインIII領域内に見つかったloss-of-functionの変異部位が、Mid1タンパク質との相互作用に重要であるか否かを変異型Cch1タンパク質と野生型Mid1タンパク質の共免疫沈降で調べる。また、当初より行っているMid1タンパク質に非依存的な変異型Cch1タンパク質のスクリーニングは依然としてうまく行っていない。今後は、Cch1のドメインIIIに焦点を絞り、この領域に突然変異をランダムに入れ、Mid1タンパク質に非依存的になる変異型Cch1タンパク質をスクリーニングする予定である。
平成27年度内に完了させる予定だった、Cch1タンパク質のドメインIII領域内変異体のスクリーニングに予想以上に手間取った。試行錯誤の結果、そのスクリーニングはうまくいくようになったが、平成28年度にその実験が一部ずれ込んだ。そのために次年度に研究費の一部を繰り越す必要が生じた。
ゲノムDNA抽出キット、酵母用培地、シャーレ、ピペットなどの購入
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http://www.u-gakugei.ac.jp/~iida/index.html