研究実績の概要 |
電位作動性Ca2+チャネル(voltage-gated Ca2+ channel = VGCC)の研究は、主に動物の興奮性細胞(つまり神経細胞、筋細胞など)を用いて多くの研究がなされてきた。その結果、その立体構造と電気生理学的性質がかなり明らかにされ、Ca2+チャネル病の理解にも貢献している。一方、VGCCは動物界だけでなく菌界にも広く存在している。しかし、菌類のCa2+チャネルの構造と機能はほとんど分かっていない。本研究では、非興奮性細胞であり、菌類のモデル生物である出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のVGCCに着目して、そのポア形成サブユニットであるCch1と制御サブユニットであるMId1の研究を行った。 Cch1とMid1が共存してはじめてCa2+透過活性が発生する。そのため、両サブユニット間の相互作用がチャネル活性に重要である。また、Cch1またはMid1の遺伝子を欠損した株は、性フェロモンであるα-factor受容後にCa2+を取込めずに死にいたる。昨年度までの本研究から、Cch1の4つのドメインのうちドメインIIIがMid1との相互作用に重要であることが明らかにされている。これを踏まえて、本年度はこのドメインIIIの領域にMn-PCR法で突然変異を導入し、変異タンパク質のcch1欠損株の致死性を相補できるか否かでドメインIII内のどのアミノ酸残基がCch1の機能に重要かを調べた。その結果、C1284R, S1322G, M1333K, P1353L, D1371V, C1379S, I1392T, M1393TおよびS1394Fの合計9個の単一変異を見出した。そのうち、Mid1との共免疫沈降実験で、D1371V、I1392TおよびS1394FがMid1との相互作用に関与することが示唆された。
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