研究課題
単一の円順列緑色蛍光タンパク質(cpEGFP)とバクテリアATP合成酵素εサブユニットをベースにした新規蛍光ATPバイオセンサー「QUEEN」を開発した。QUEENは400ナノメートルと490ナノメートルに励起極大を持っており、ATPの結合によって400ナノメートルにおける励起効率が上昇し、490ナノメートルの励起効率が低下するという性質を有していた。QUEENを発現する細菌を、2つの励起波長で交互に励起しながら蛍光イメージングすることにより細菌細胞内のATP濃度を非常に高い定量性で決定することに成功した。次に、QUEENをベースに細胞外ATP濃度を可視化するための改良を加えた。QUEENは光異性化が生じ易かったため、cpEGFPの蛍光団近傍のアミノ酸残基にランダムに変異を加え、光異性化が生じにくい変異体をスクリーニングによって得た。また、細胞外に放出されるATPはすみやかに拡散し、かつ細胞外ATP分解酵素によって消去されると考えられているため、細胞外ATPを検出するためには非常に高速にATPと結合する必要があった。QUEENはATPに対する反応速度が10秒程度と遅かったが、εサブユニット部分に変異を加える事で、反応速度を100倍以上高めることに成功した。このようにして改良したQUEENにGPIアンカー配列を付与することで動物細胞の細胞表面に提示させ、培地中にATPを加えたところ、ATP依存的に非常に速やかな蛍光シグナルの変化を観察した。この事から、改良したQUEENは動物細胞表面においても機能すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
初年度は細胞外ATPを検出するためのATPバイオセンサーの構築し、動物細胞を用いて実際に機能するかを確かめるまでを予定していたが、ほぼその予定通りに進捗している。ただし、予定していたイメージング手法の検討についてはまだ着手していないため、今後進める必要がある。
前年度に開発したバイオセンサーの更なる改良(特に蛍光変化量)をおこないつつ、膵島でのバイオセンサー発現系を構築し、膵島における細胞外ATPの動態をイメージングする。細胞外ATPシグナルは、発生や免疫などにおいても重要性が指摘されていることから、膵島以外の細胞についても当該バイオセンサーを発現させてイメージングをおこなう。この過程で、前年度着手できなかったイメージング手法の検討も合わせておこなう。培養動物細胞の系でバイオセンサーの評価を確定させた後に、バイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスやトランスジェニックゼブラフィッシュを作製し、in vivoにいおける細胞外ATPシグナルのイメージングを進める。
計画では昨年度に研究員を雇用する予定で人件費を計上していたが、適任者が見つからなかったため使用を見送ったのが理由である。
本年度は研究員を雇用し、その人件費として使用する。
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