研究課題/領域番号 |
26291027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
今村 博臣 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20422545)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ATP / プリン受容体 / イメージング / バイオセンサー |
研究実績の概要 |
①単一蛍光タンパク型ATPバイオセンサーの改良 前年度までに、光安定性を改善したATPバイオセンサーの変異体を作製したものの、ATPに応答した蛍光変化が小さいという問題が残っていた。そこで、蛍光タンパク質とATP結合タンパク質の間のリンカー配列を検討することにした。まず、ランダムプライマーを用いたPCR法よって、リンカー配列をランダムに変化させた多数のクローンを作製した。続いて個々のクローンを大腸菌で発現させた後にアフィニティービーズを用いて精製し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いてATPに対する応答を調べた。200個以上のクローンをスクリーニングした結果、蛍光変化量が2倍以上増大したクローンを複数個得ることに成功した。 続いて、新たに作製したATPバイオセンサーにGPIアンカーを融合せせた人工遺伝子を哺乳類細胞に導入し、哺乳類細胞の細胞膜表面に発現を試みた。ところが、蛍光顕微鏡による観察をおこなった結果、ほとんど全く蛍光を観察することができなかった。 ②生物発光共鳴エネルギー移動型ATPバイオセンサーの開発 蛍光ATPバイオセンサーは励起光を必要とするため、光に弱い、あるいは光に応答する生物に応用することは困難であった。そこで供与体に発光タンパク質、受容体に蛍光タンパク質をもつ生物発光共鳴エネルギー移動型ATPバイオセンサーの開発を試みた。その結果、ATP濃度に応じて共鳴エネルギー移動効率が大きく変化するバイオセンサーを得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バイオセンサーの開発においては、通常、大腸菌で発現させたバイオセンサーを精製して評価をおこない、次に哺乳類細胞など目的の細胞に導入する。今回、大腸菌レベルでは大きな改善が見られたATPバイオセンサーが、哺乳類細胞でほぼ全く発現しないという予想外の問題に遭遇した。そのため、当初の予定よりも研究の進捗がやや遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
①単一蛍光タンパク型ATPバイオセンサーの哺乳類細胞での発現 大腸菌では発現していたバイオセンサーが哺乳類細胞では発現が見られなかった理由としては、大腸菌と哺乳類間のコドン使用頻度の違い、mRNAのスプライシングといった理由が考えられた。こうした問題を避けるため、人工遺伝子合成により、コドンを哺乳類細胞に最適化するほか、スプライシングなどのmRNAの不安定化につながる要因を除去する。同時並行して、哺乳類細胞を用いたバイオセンサー評価系を立ち上げる。スクリーニング系に哺乳類細胞を用いることで、哺乳類細胞で発現しないような配列を有するバイオセンサーをスクリーニング段階で除外することができると考えている。発現に改善が見られたバイオセンサーを膵島β細胞やマスト細胞、アストロサイト等の細胞膜表面に発現させ、ATP放出を誘導する刺激を加えた際に、イメージングによって蛍光シグナルを検出できるかを検討する。蛍光シグナル変化の検出に成功したクローンを用いてさらいに詳細なイメージングをおこなう。 ②発光型ATPバイオセンサーを用いた細胞外ATPの検出 新たに作製した発光型ATPバイオセンサーにGPIアンカーを融合せせた人工遺伝子を哺乳類細胞に導入し、哺乳類細胞の細胞膜表面に発現を試みる。その後、上と同様に発光シグナル変化を検出できるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に若干の遅れが生じ、予定していた研究の一部が遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していたものの平成27年度に遂行できなかった研究分を次年度におこなうことで残額分を使用する。
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