①単一蛍光タンパク質型ATPバイオセンサーの改良 前年度までに、光安定性が高くかつ蛍光シグナルの変化量が大きい単一蛍光タンパク質型ATPバイオセンサーの開発に成功したが、このバイオセンサーを哺乳類細胞の細胞膜表面へ発現させてもほとんど蛍光が観察できないという問題が生じていた。コドン改変体を含む様々な変異体を作成してこの問題の原因を探索したところ、光安定性を付与するアミノ酸変異が入ることにより、哺乳類細胞内におけるタンパク質の安定性が著しく低下していることが強く示唆された。細胞質に発現させた場合は僅かではあるが蛍光が観察されることから、安定性の低下は特に小胞体・ゴルジ体において顕著であると考えられた。そのため、単一蛍光タンパク質型ATPバイオセンサーを用いた細胞外ATPイメージングは、いったん中断することとした。 ②生物発光共鳴エネルギー移動型ATPバイオセンサーの開発 前年度に開発した、供与体に発光タンパク質、受容体に蛍光タンパク質を有する生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)型ATPバイオセンサーの改良に取り組み、極めて大きなBRET効率変化を示すバイオセンサーの開発に成功した。このバイオセンサー(BTeam)を哺乳類細胞の細胞質およびミトコンドリアに発現させ、発光マイクロプレートリーダーを用いて、生細胞内ATP濃度を極めて高い定量性で検出することに成功した。また、顕微鏡を用いて個々の生細胞内のATP濃度を経時的にイメージングすることにも成功した。現在、この技術を転用し、発光を用いて細胞外ATPをイメージングする手法の開発を進めている。
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