研究課題/領域番号 |
26291030
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 祐一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20532980)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 生理学 / 膜電位 |
研究実績の概要 |
心臓の拍動や脳の活動に代表されるように、細胞膜を介した電気的シグナリングは我々の生命活動にとって重要な役割を果たしています。その電気活動を発生させ制御する中心的な役割を担う分子が電位依存性イオンチャネルです。電位依存性イオンチャネルは分子内のプラスに帯電したアミノ酸残基をセンサーとして利用して、細胞膜にかかる電位(膜電位)を感じ取って構造変化を起こし、イオンの透過を制御しています。本研究では、最小単位の電位依存性チャネルであるH+チャネルを対象に、電気生理学的手法、光学的観測手法を用いて、分子の構造変化、センサー電荷の動きをダイナミックに解析し、電位依存性チャネルが膜電位を感じとるメカニズムを分子構造のレベルから明らかにすることを目的に行います。 本年度は、H+電流とゲート電流の関係を定量的に解析することを試みた。H+電流のみが観測される野生型Hv、H+電流とゲート電流両方が観測される変異体チャネル、および、ゲート電流のみが観測される変異体チャネルそれぞれをツメガエル卵母細胞に発現させ、二本刺し膜電位固定法を用いて、観測できるゲート電流、H+電流に対して、電流の発生域値や電流-電圧関係、膜電位依存性、キネティクスといった基本となる電気生理学的パラメターを定量的に解析した。新たにゲート電流の出現する変異体を検索した。生理的ブロッカーである亜鉛を用いて実験を行い、亜鉛の阻害機構について考察した。分子動力学的解析のための2量体構造モデルの作成、および光学的解析のための変異体作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通り、Hvの野生型および変異型チャネルに対して電気生理学的解析を行い、膜電位感受性の基本的な特性が明らかになり、この結果を踏まえ来年度以降の研究を遂行出来るため。また、結晶構造解析をもとに2量体構造モデルの作成に取り組み分子動力学的計算を実行中である。以上より研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光科学的観測手法と分子動力学的手法を用いて、H+電流のみが観測される野生型Hv、H+電流とゲート電流両方が観測される変異体チャネル、および、ゲート電流のみが観測される変異体チャネルそれぞれに対して、定量的な解析を行い、得られた基本的な電気生理学的なパラメータとの相関を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Hvチャネルの結晶構造が報告され、研究遂行上、分子構造をもとにした分子動力学的解析を優先して行う必要性が明らかになった。分子動力学的解析は消耗品費をほとんど必要としないため、次年度使用額が生じた。そのため光学的解析などの実験にやむを得ない遅延が生じ、実験機器購入費・消耗品費などの物品費と人件費・謝金に次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試薬購入に1,000,000円、国内学会参加旅費に100,000円、海外学会参加旅費に300,000円、実験補助員の雇用に2,000,000円、その他印刷出版費に200,000円
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