研究課題
心臓の拍動や脳の活動に代表されるように、細胞膜を介した電気的シグナリングは我々の生命活動にとって重要な役割を果たしています。その電気活動を発生させ制御する中心的な役割を担う分子が電位依存性イオンチャネルです。電位依存性イオンチャネルは分子内のプラスに帯電したアミノ酸残基をセンサーとして利用して、細胞膜にかかる電位(膜電位)を感じ取って構造変化を起こし、イオンの透過を制御しています。本研究では、最小単位の電位依存性チャネルであるH+チャネルを対象に、電気生理学的手法、光学的観測手法を用いて、分子の構造変化、センサー電荷の動きをダイナミックに解析し、電位依存性チャネルが膜電位を感じとるメカニズムを分子構造のレベルから明らかにすることを目的に行います。本年度は、電気生理学的解析結果、光科学的解析結果と分子動力学的解析結果の相関を検討し、分子が膜電位を感じる仕組みを検討・考察した。新たに、ゲート電流を発生する変異体を見つけ電気生理学的に解析し、ゲート電流の出現するメカニズムについて検討した。ツメガエル卵母細胞からほ乳類の細胞へ発現形を変更し詳細な解析が出来るか検討した。ゲート電流は通常に発生させるが、イオン電流のキネティクスを著しく遅くする変異体を作成し解析した。温度操作を施すことでイオン電流のみを押さえることが出来ることを見いだし、ゲート電流をより詳細に解析した。他の電位依存性チャネルに適用するため、Hvチャネルと他の電位依存性チャネルとのキメラ体を作成し、電流の出現について解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、当初の予定通り、電気生理学的解析結果、光科学的解析結果と分子動力学的解析結果の相関を検討し、分子が膜電位を感じる仕組みを検討・考察した。前年度からの引き続きで、分子動力学的解析を行い、チャネルの閉状態から開状態への遷移を検討した。さらに新たな変異体や実験温度制御によりより詳細に解析することが可能となった。これら結果を踏まえ来年度以降の研究を遂行出来るため、研究課題はおおむね順調に進展している。
今後は、報告されたHvチャネルのホモログである電位センサー蛋白の結晶構造を基に、膜電位を感知してチャネルが開く構造変化を検討する、追加(再現)実験の実施を行う。Hvチャネルと他の電位依存性チャネルとのキメラ体について解析を進め、膜電位感受性の普遍的な理解を目指す。成果をまとめ論文発表を行う。
当初計画では、Hvチャネルの結晶構造を基に、解析を行い研究を完了する予定であった。研究期間中にHvチャネルのホモログである電位センサー蛋白の結晶構造が報告された。補助事業の目的「分子が膜電位を感知する基本原理の理解」をより精密に達成するために、Hvチャネルに対する再現実験とそのホモログも対象とした実験を加え理解を深める必要が生じた。追加(再現)実験の実施と論文発表のため継続して研究を行う。
試薬購入に1,700,000円、国内学会参加旅費に100,000円、実験補助員の雇用に1,900,000円、その他印刷出版費に223,011円
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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