研究課題
生命機能の根幹に位置するミトコンドリアは、細胞質全体に管状の網様構造を形成・分布し、融合と分裂を絶えず繰り返す動的なオルガネラである。この「ミトコンドリア・ダイナミクス」の破綻は、生命の高次機能にさまざまな影響を及ぼすことが知られており、特にヒトでは多数の疾患の発症とも深く関わっている。本研究の目的は、未だ解明されていない点の多いミトコンドリア・ダイナミクスの素過程(動き、融合・分裂、修飾調節など)を、分子レベルで明らかにすることにある。本研究の推進により、これまでその生理的な重要性のみがクローズアップされてきたこの現象を、ミクロ(分子)とマクロ(個体)の両面から理解できることが期待できる。そこで本研究では、未だ解明されていない点の多いミトコンドリア・ダイナミクスの素過程を分子レベルで明らかにすることを目的し、ミトコンドリア・ダイナミクスを次のような三つの素過程(①運動、②融合・分裂、及び③修飾調節)に大別し、その各過程で中心的な役割を担うタンパク質の構造機能解析を行い、それら分子マシナリーの構造基盤を構築する。当該年度では、主に③に関わる遺伝子破壊マウスの作製を中心に、研究分担者である奈良女子大学・渡邊教授と共に研究を進めた。その結果、破壊する遺伝子を基にしたベクターの作製、ES細胞への導入、その後の薬剤によるセレクションも無事成功し、サザンブロット法による選別で、目的の遺伝子破壊を確認した。現在、それらを基にキメラマウスの作製まで成功しており、今後、ヘテロマウスの作製を進めていく。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究では、ミトコンドリア・ダイナミクスの生理的な意義を理解するために、その現象に関わる分子群の作用機序の理解、及び個体レベルでの役割を調べる両面からの研究を計画している。該当年度は、特に個体解析を進める上で必須の遺伝子破壊マウスの作製を中心に進めた。当初の予定より早くキメラマウスの作製までに至り、今後はそれらマウスを用いて最終的に遺伝子破壊マウスの誕生まで進めていく。また、それ以外の細胞株の樹立や、機能解析を進めていく上での組換えタンパク質の作製も順調に行われており、現時点において当初の計画以上の進展が見られた。
上述、ミトコンドリア・ダイナミクスに関わる分子群の解析を分子、細胞、及び個体レベルで進めていく。特に、ミトコンドリア・ダイナミクスの生理的な役割で、ウイルスに対する細胞内の免疫応答への影響を解析していくために、目的ウイルスの準備も進めていく。
計画研究内で計上していた消耗費が次年度以降の実験で必要になったため。
抗体や培養細胞用の消耗費を次年度購入予定。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
生化学
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http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K002718/
http://www.sci.kyushu-u.ac.jp/