研究課題/領域番号 |
26291034
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
昆 隆英 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30332620)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分子モーター / 分子機械 / 生物物理 / 蛋白質 / 細胞内輸送 |
研究実績の概要 |
ダイニンは,ATP加水分解を利用して微小管上を滑り運動する巨大なモーター蛋白質複合体で,そのモーター活性は細胞内物質輸送,細胞移動,細胞分裂,鞭毛・繊毛運動など広範な細胞運動の駆動に必須である.しかし,これら多様な細胞内機能を発揮するために重要な「ダイニンの運動活性を制御するメカニズム」はいまだに謎に包まれており,その解明は生物物理学・細胞生物学分野の重要な研究課題のひとつである. 本研究課題は,ダイニンの機能面での解析を進めるとともに,構造面での研究を強力に推進することで,その運動活性制御メカニズムの全貌を原子レベルで明らかにすることを最終目標としている. 本年度の研究では,ダイニンの細胞内制御に重要と考えられている二量体不活性化複合体の構造解析に向けた諸検討を進めた。まず,二量体ダイニンの発現・精製系の集中的な検討を行うことで,結晶構造解析に必要な量(ミリグラムオーダー)の複合体を高純度で得られる系を確立した。次に,溶液条件とダイニンコンストラクトの網羅的検索を行うことで,不活性化複合体の安定形成条件を見出した。さらに,得られた二量体不活性化複合体について予備的な結晶化検討を行った結果,複数の独立条件で複合体の単結晶を得ることに成功した。 また,本研究では,近年劇的な進歩を遂げているdirect detectorを搭載したクライオ電子顕微鏡を用いることで,ダイニン制御複合体の溶液条件での高分解能構造解析も目指している。本年度の研究では,大阪大学・超高圧電顕センターに設置されているTitan Krios/Falcon2を用いて,ダイニン複合体およびダイニン-微小管複合体についてクライオグリッド作成条件の予備検討を行い,良好な電子顕微鏡像取得条件を見出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究では,ダイニン運動制御機構の構造基盤解明に向けて,第二の課題である「ダイニン二量体不活性化複合体の構造研究」について,一定の成果を上げることができた。しかし今年度は,研究代表者の異動に伴い,新たに研究室を立ち上げる必要が生じたため,当初の予定よりも研究進行に若干の遅れが生じている。そのため上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
ダイニン運動活性のオン・オフ制御は様々な階層で起こるが,特に重要だと考えられるのは次の4点である:①ダイニンMD内の複数のATP加水分解部位による制御;②ダイニンを構成する2個のMD間の相互作用による制御;③モーター活性制御蛋白質のダイニンへの結合による制御;④微小管との相互作用による制御。前年度および今年度の研究により,最初の二つの課題については一定の成果を得ることができた。今後は,これらの課題の完遂を目指すとともに,残りのより上位の制御機構についても構造基盤解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属研究組織の変更(法政大学生命科学部→大阪大学理学研究科)があり,新規研究室の立ち上げを行った。それに伴い,今年度前半の研究遂行と研究費使用に若干の変更が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
新規研究室では大学院生2名,学部生3名からなる研究組織の立ち上げを完了した。次年度使用額は,この組織において本研究課題を遂行するために必要な研究機材および消耗品の追加購入費に充てる予定である。
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