研究課題
卵子と精子が接合して形成される受精卵においては,細胞内成分の大規模なリモデリングが起こり,この変換がその後の正常な発生に必須である.我々はこのプロセスにおいて細胞内膜系もダイナミックに変化することを見出している.そこで,本研究では初期胚における細胞内膜系リモデリングを制御する分子機構とその生理機能について解析を進めている.本年度はまず表層顆粒に局在するタンパク質CAV-1-GFPの動態を指標として,この動態が異常になる変異株の分離を試み,2種の変異株を同定した.1つは制限温度において胚性致死となる温度感受性株で,CAV-1-GFPが表層顆粒にターゲットされず小胞体に蓄積する表現型を示した.そこで,この原因遺伝子を同定したところ,ファルネシル2リン酸合成酵素(FDPS)に変異があることが明らかとなった.また,この変異株においては低分子量GTPaseである Rab1等の局在性が著しく低下していることが判明した.Rabの局在化にはC末端側に付加されたゲラニルゲラニル基が必須であることが知られており,この変異株においてはFDPSの欠損によってゲラニルゲラニル基の合成が低下しているため,Rabの局在性と機能が低下していると考えられる.また,線虫のキナーゼ等をコードする遺伝子群に対してRNAi法による網羅的ノックダウンを行い,CAV-1-GFPの輸送,分解に影響を与える遺伝子を複数同定した.一方,マウス受精卵内における膜動態の高解像度ライブイメージングシステムを構築した.そこで,受精卵における父性ミトコンドリアの動態を観察したところ,受精卵に侵入した父性ミトコンドリアはしばらく中片部に留まり,その後徐々に細胞質へと分散していくことが明らかとなった.また,マウス受精卵において一群の細胞膜タンパク質の動態を観察したところ,受精後のある時期に同調的にエンドサイトーシスされ分解されることが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,受精前後の細胞内膜系のリモデリングに関与する遺伝子の同定,マウス受精卵における膜動態の解析系の構築等が完了しており,おおむね順調に進んでいる.
前年度に引き続き,線虫を用いて受精前後の細胞内膜系のリモデリングに関与する遺伝子の同定を試み,平行してこれらの因子の機能解析を詳細に進める.また,マウス受精卵におけるライブイメージングシステムを活用して,さまざまなオルガネラ動態を解析するとともにこれらを制御する分子機構についてノックアウトマウス等を用いて解析を行う.さらに,新たな生命現象を発見した際にはその生理機能について明らかにすることを目指す.
研究推進のため,博士研究員もしくは研究補助員の雇用を計画していたが,募集に応募がなかったため,再度募集を行っている.
現在,博士研究員もしくは研究補助員を再度募集しているので,適任者が決まり次第,雇用し,さらなる研究推進を行う.
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Autophagy
巻: 11 ページ: 9-27
10.1080/15548627.2014.1003478
Mol Biol Cell.
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医学のあゆみ
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http://traffic.dept.med.gunma-u.ac.jp/