研究課題/領域番号 |
26291036
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 健 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (30311343)
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研究分担者 |
原 太一 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00392374)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オルガネラ形成・動態 / 線虫 / マウス / 受精 / 膜トラフィック |
研究実績の概要 |
本研究では初期胚における細胞内膜系リモデリングを制御する分子機構とその生理機能について解析を進めている.本年度はまず線虫の受精前後においてその局在性を変化させながら,エンドサイトーシス,分泌,卵割に働く低分子量GTPase Rab11に着目し,その機能制御因子の同定を試みた.酵母ツーハイブリッド法により線虫のRab11と相互作用する因子を探索したところ,線虫からヒトまで保存された新規因子REI-1を同定した.REI-1はSH3BP5ドメインを持つものの,既知のRab制御因子とは顕著なホモロジーを示さなかった.興味深いことに,REI-1はRab11のGDP型及びヌクレオチド非結合型と特異的に結合することから,REI-1がRab11のGDP/GTP交換因子 (GEF) である可能性について検討した.まず大腸菌において線虫REI-1及びヒトホモログ (SH3BP5) を発現させ,精製を行った.続いて,これらのタンパク質のRab11に対するGDP/GTP交換能を解析したところ,両者とも非常に強いGEF活性を示すことが明らかとなった.REI-1は線虫の生殖腺において発現しており,後期ゴルジ体においてRAB-11と共局在していた.REI-1を欠損した線虫の受精卵では,Rab11がゴルジ体やエンドソームから細胞質中に分散し,受精卵の分裂に遅延が生じることから,REI-1タンパク質は受精卵においてRab11を後期ゴルジ体に導き,細胞分裂を制御する新規のRab11 GEFであると結論した.一方,前年度の解析からマウス受精卵ではある種の膜タンパク質が分解されることが明らかとなっていたので,これらの輸送の素過程について解析を行った.その結果,マウスにおいても受精後にはエンドソーム,リソソーム系が活性化し,エンドサイトーシス経路を介した細胞膜タンパク質の大規模分解が起こることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
受精前後において複数の機能を担う低分子量GTPase Rab11の新規GDP/GTP交換因子REI-1の同定に成功しており,線虫受精卵におけるその生理機能を解明している.REI-1は既知のGDP/GTP交換因子とは顕著なホモロジーがなく,線虫からヒトまで保存されたまったく新たなGDP/GTP交換因子ファミリーを発見したといえるため,当初の計画以上にすすんでいると思われる.また,マウス受精卵における解析も順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,本研究で同定された受精前後の細胞内膜系のリモデリングに関与する新規因子の機能解析を進める.また,マウス受精卵におけるライブイメージングシステムを活用して,ミトコンドリアやエンドソーム等の膜系オルガネラ動態と活性制御機構について明らかにする.さらに,プロセッシングボディー(P-bodies)等の細胞質オルガネラについても動態解析を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究補佐員を1名雇用する予定であったが,適任者が見つからなかったため人件費を繰り越した.また,研究室のメンバーが一時的に減少したので,物品費,旅費,その他に次年度繰越が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に研究補佐員を1名雇用することとした.また,その他の繰り越し金に関しては,これまでに作製した線虫,マウスが増加してきたので,これらの維持費と解析に必要な試薬,物品の購入等に当てる予定である.さらに,研究室のメンバーが増加したことから,平成27年度以上の支出が見込まれる.
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