研究課題/領域番号 |
26291037
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
末次 志郎 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (70345031)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞生物学 |
研究実績の概要 |
細胞の移動やがん細胞の浸潤転移などの様々な生命現象に関わる細胞膜の突起構造に関わる膜形態を制御するタンパク質として、膜の形態を直接結合することにより変形させるF-BARドメインを含有するタンパク質に注目する。F-BARドメインはこれまで、突起ではなく細胞膜の陥入構造に関与すると考えられてきた。しかし、CIP4とGAS7は、F-BARドメインを持つにもかかわらず突起構造への関与が見出されており、これまでと異なる作用機序を持つ可能性の高い。したがって、CIP4とGAS7の構造機能解析および細胞生物学的な解析を行う。CIP4については、特異的な結合タンパク質を得た。本年度の研究では、前年度に確立した、CIP4結合タンパク質の発現系を用い、結合タンパク質の生成を行った。次に、生化学的にCIP4と特異的な結合タンパク質の脂質結合を調べるためのリポソーム共沈実験を行った。脂質結合実験の結果、CIP4に加えて、程度の違いはあるものの、PACSIN2やFBP17と脂質の結合も抑制することを見出した。すなわち、CIP4結合タンパク質として同定されたものの、多様なF-BARドメインタンパク質の機能を調節していることが示唆された。つまり、このタンパク質は、膜形態の一般的な制御因子となっている可能性を見出した。GAS7については、すでに突出膜形成の関わる細胞機能に関わることを明らかにしている。本年度の研究では、GAS7のF-BARドメインの構造解析に成功した。GAS7のF-BARドメインは、これまで構造が解明されているF-BARドメインに照らし、幾つかのユニークな特徴を有していることがわかった。さらに、GAS7全長の結晶の作成にも成功した。また変異導入を進め、脂質結合面を明らかにした。その結果、機能する膜構造と立体構造の関連について示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CIP4の結合タンパク質については、当初よりも結合するタンパク質の種類が多いことが示唆され、膜形態の一般的な制御因子となっている可能性を見出した。このことは当初期待していたよりも広範囲の細胞機能を調節できることを示唆している。GAS7については、構造機能解析が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
YPELについては、様々なBARドメインとの結合を調べ、共結晶の作成を目指す。また生化学的、細胞生物学的解析も進める。GAS7については、試験管内においても脂質膜と結合し,脂質膜の形状を変化させると考えられる。従って、試験管内で精製脂質により構成した人工脂質膜と反応させ、その形状の変化を電子顕微鏡を用いて調べる。さらに、結合する脂質分子に特異性がないか検討する。さらに、分子の並びを超解像解析などにより同定することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた立体構造解析のための試薬類が、すでに保有していた試薬により間に合ったため購入せずに済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年度のタンパク質精製や構造機能解析のための試薬の購入に充てる予定である。
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