研究課題/領域番号 |
26291038
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
紺谷 圏二 東京大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30302615)
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研究分担者 |
福山 征光 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (20422389)
齋藤 康太 東京大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (60549632)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低分子量Gタンパク質 / メンブラントラフィック / 一次繊毛 / 繊毛性疾患 / ARF/ARL GTPase |
研究実績の概要 |
低分子量Gタンパク質Arl(Arf-like)ファミリーは、膜オルガネラ間の輸送を制御する低分子量Gタンパク質Arfと相同性を有する分子群である。このArlファミリーに属するArl6は、一次繊毛と呼ばれる細胞膜から小さく突出した細胞小器官への物質輸送に関与することが示唆されており、一次繊毛の機能異常に伴う遺伝性疾患バルデービードル症候群(BBS)の原因遺伝子であることも報告されている。これまでの解析から、BBSで同定されたある種のArl6変異が、Arl6のGTP結合能を非常に低下させることを見いだしているが、細胞内においてArl6のグアニンヌクレオチド結合状態がどのように制御されているかは不明である。そこで今回、一次繊毛を形成するIMCD3細胞を用いてそれらに関する解析を行った。まず、IMCD3細胞でArl6-EGFPを発現する細胞株を作成し、代謝ラベルによる実験を行った。その結果、細胞内のArl6-EGFPの大部分はGDP型で存在していることが明らかとなった。また、GTP加水分解能が欠損すると考えられる点変異(Q73L)を導入しても、大部分はGDP型のままであった。よって細胞内に存在するArl6の大部分は不活性型であり、その原因はGTP型からGDP型への変換(不活性化)が亢進しているためではなく、主にGDP型からGTP型への変換(活性化)が起こっていないためと考えられた。一方、両親媒性のN末端領域を欠損したArl6では、細胞内におけるGTP結合型の割合が増加することが明らかとなった。よってArl6においても、Arfファミリーで報告されている特性と同様に、そのN末端領域が適切なオルガネラ膜と相互作用することにより構造変換が生じ、GDP-GTP交換反応が亢進して活性化される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Arl6に関してはこれまで細胞内における活性制御が不明であったが、今回の研究によりGDP-GTP交換反応がその活性化の律速段階であることや、自身のGTP加水分解活性が非常に低いことが明らかになり、今後活性制御機構を解明していく上で手がかりとなると考えられ、一定の評価ができる。
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今後の研究の推進方策 |
Arl6を含めて、多くのArlファミリーに関してはその活性制御機構は不明であり、細胞内でのグアニンヌクレオチド結合状態の解析を含めて、それらの活性を制御する分子実体を解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、各種のARL GTPaseに関する制御因子群を同定し、それらの生化学的性質を細胞機能をRNAi法や過剰発現により解析する予定であったが、完全同定までには至らなかったため、詳細な解析を行う状況になく、消耗品や機器購入にかかる費用が予想よりも少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は制御因子群の同定を行い、それらの機能解析に必要なRNAiや標識化合物などの消耗品や、各種検出装置などの機器の購入に、合わせた研究費を使用する計画である。
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