研究課題
低分子量Gタンパク質ARF/ARLファミリーに属するARL8は、哺乳動物では2つのサブタイプ(ARL8a及びARL8b)が存在し、リソソーム機能に介在することが知られている。申請者は、哺乳動物個体におけるARL8の生理的役割を解明する目的で、ARL8bのノックアウトマウスの解析を進め、卵黄嚢内胚葉でのARL8bの機能が、マウス胎仔の正常な生育に必要であることを明らかにしてきた。卵黄嚢内胚葉はエンドサイトーシスで取り込んだ母体由来物質をリソソームで分解し、胎仔へ栄養供給を行っていると考えられているが、ARL8bの欠損によりその栄養供給能が低下するかを検討する目的で、卵黄嚢内胚葉特異的にArl8bをノックアウトするコンディショナルノックアウトマウス(ARL8bCKO)を用いて、メタボローム解析を行った。その結果、ARL8bCKOでは、必須アミノ酸を含む複数のアミノ酸量が胎仔本体において低下していることが明らかとなり、卵黄嚢内胚葉でArl8bが欠損することで胎仔への栄養供給が低下し、胎仔の生育異常が生じる可能性が考えられた。一方、胚発生中期では、ARL 8bホモ欠損マウスは、脳背側正中線に特徴的な遺伝子発現の異常を示した。脳背側正中線を構成する細胞は、神経管閉鎖前にBMPシグナルによって運命決定される細胞群であるが、ARL 8b欠損マウスでは、この細胞群でBMPシグナルが異常に増強していた。BMPにより活性化されたBMP受容体はエンドサイトーシス後にリソソームで分解されることが示されていることから、ARL 8b欠損マウスではBMP受容体の分解不全に伴いBMPシグナルが持続的に活性化し、背側正中線の運命決定に異常を呈する可能性が考えられた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
J Biol Chem
巻: 292 ページ: 13441, 13448
10.1074/jbc.M117.792556
J Cell Sci
巻: 130 ページ: 3568, 3577
10.1242/jcs.200519
Nat Commun
巻: 8 ページ: 1592
10.1038/s41467-017-01687-x