研究課題
ミトコンドリアオートファジー(略してマイトファジー)は、選択的なミトコンドリア分解機構である。マイトファジーは、ミトコンドリア品質管理に大きく貢献しており、様々な疾患にも関連する重要な現象であるが、ヒトを含む高等生物で、マイトファジーの分子機構はほとんど解明されていない。我々は、これまでに出芽酵母を用いた実験系において、マイトファジーに関連する遺伝子のスクリーニングを行い、マイトファジー関連因子の同定とその分子機構の解明を試みてきた。本研究では、これまでの研究を哺乳類まで発展させ、出芽酵母およびヒト細胞の実験系において、マイトファジーに関連する遺伝子の同定とその分子機構の解明を目的としている。平成26年度は、出芽酵母における研究では、マイトファジーに必須のミトコンドリア外膜タンパク質Atg32の発現を制御する機構に関して研究を進めた。Atg32の発現が、栄養飢餓やラパマイシン処理により大幅に増加することを見いだし、さらに、Atg32のプロモーター領域の詳細な研究を行った結果、Atg32の発現は、TORの下流でUme6-Sin3-Rpd3複合体により抑制されており、TORを抑制することでAtg32発現抑制が開放され、Atg32が発現するようになることを解明した。平成26年度は、同時にヒト培養細胞における研究を行い、種々のMAPキナーゼとマイトファジーの関連を検討した所、MAPキナーゼp38とErk2、及びその上流のシグナル経路がマイトファジー誘導に重要な役割を持つことを解明した。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、ミトコンドリアオートファジーの分子機構を出芽酵母、線虫、ヒト細胞を用いて解明しようとする研究であるが、平成26年度では、既に出芽酵母とヒト細胞を用いた研究で成果が上がっており、当初の計画以上に進展していると判断した。一方で、線虫の研究は、マイトファジーの観察法の確立に時間を費やしており、必ずしも予定通りに進展しているとは言えない。全体として考えると、おおむね順調に進展していると判断できる。
1,出芽酵母における研究では、予定通りにAtg32結合タンパク質の解析を行い、マイトファジー制御に関わる新規因子の同定を試みる。2,線虫における研究では、マイトファジー観察法の確立が遅れているため、平成27年度は本研究に力を入れ、観察法樹立に向けて研究を継続する。3,ヒト細胞を用いた研究では、これまでの研究をさらに発展させて、既に予備実験で同定している未発表因子とマイトファジーの関連を詳細に解析する。また、申請時には、遺伝子破壊をTALENを用いて行うことにしていたが、CRISPR-cas9という新たな遺伝子改変法を導入した所、非常に効率よく遺伝子破壊が可能であるため、本研究にもCRISPR-cas9を用いることとした。
平成26年度はほとんどの研究が予定以上に早く研究が進み、計画していた予算よりも少額の研究費で成果を挙げることができた。また、線虫を用いた実験では、実験系の立ち上げに予想以上に時間がかかっており、実験系立ち上げ以降に行う実験のための経費が繰り越されることとなった。このため、多くの次年度使用額が生じる結果となった。後述のように平成27年度は、この次年度使用額を用いて、線虫の実験に人員を配置し、研究を促進する予定である。
平成27年度は、実験が遅れている線虫を用いた研究を推進するため、線虫の研究のために研究員または研究補助員を雇用し研究を推進する。次年度使用額の大半は、この人件費として使用する予定である。これ以外の研究費に関しては、おおむね当初の予定通りの使用計画である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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