研究課題/領域番号 |
26291042
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三木 裕明 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (80302602)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストレス |
研究実績の概要 |
さまざまな由来の培養系がん細胞を用いて、それぞれでのMg2+量の比較を行った。その結果、細胞によってMg2+量に違いがあることが明らかとなった。また、イオノフォアを利用して細胞内のMg2+量を人工的に変動させたところ、Mg2+量に応じたATP量の変動が観察された。以前の研究成果から示唆されていた、ATP量がMg2+によって調節されている可能性をさらに強くサポートする実験結果と考えられる。線虫でのCNNMファミリー遺伝子の変異により生じる生殖巣発達異常を視覚化するために、lag2遺伝子のプローモーターを利用してDTC(distal tip cell)がGFPで光る線虫を作成した。この線虫を利用して、RNAiによる発現抑制で生殖巣発達異常をキャンセルできる遺伝子のスクリーニングを実施した。その結果、約30個の遺伝子が候補として得られ、その中には哺乳動物系培養細胞での解析から機能的関連が示唆されているAMPキナーゼをコードする遺伝子も含まれていた。マウスでCNNM2遺伝子をホモ欠損させると致死であったので、腎臓特異的なホモ欠損マウスを作成していたが、このマウスでマグネシウム再吸収に異常が生じていることを明らかにできた。また精子での機能解析により、CNNMとCNNM2の二重欠損により運動機能がさらに悪化すること、またCa2+の流入に異常が生じていることも明らかにできた。Mg2+の調節がCa2+の動態に影響を与えていることが分かった。また、腸で特異的にTRPM6を欠損させたマウスを作成するための作業を前年度から続けてきたが、組換え遺伝子を持つマウスの作成が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、がん悪性化に関わる分子PRLとその結合標的として見つけたMg2+排出分子CNNM/MagExに関して、分子・細胞から個体レベルに渡る包括的な機能解析を行い、細胞内Mg2+制御の分子機構やその細胞レベルでの機能的重要性、またCNNM/MagExおよびそのファミリー分子による腸や腎臓での全身性のマグネシウム恒常性の制御における重要性を追究することを目的としている。27年度においては、研究計画に具体的に記した研究内容をほぼ実施することができただけでなく、追加の計画として新たに実施することにしていた線虫を用いたRNAiスクリーニングによって、マグネシウム恒常性異常に伴う生殖巣形成異常に関わる遺伝子を見つけることができた。細胞の機能制御におけるMg2+の適切な調節の生理的重要性を個体レベルで明確に示す実験結果であり、その分子機序の解明など基礎生物学的に今後の発展が期待できる重要な発見と位置付けられる。これらの理由から、27年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進展した27年度の研究成果を受けて、基本的には当初の研究計画に沿った形で今後の研究を進めて行くことを計画している。それと共に、線虫を用いたRNAiスクリーニングによってマグネシウム恒常性異常に伴う表現型異常に関わる遺伝子を見つけることができたので、その機能的関連についての解析にも取り組むための計画を新たに追加している。またTRPM6の遺伝子欠損マウスを用いた腸ポリープの解析も27年度に続いて実施してゆく予定である。いずれも、研究開始当初には予想しなかった計画であるが、所期の目的である「細胞内Mg2+制御の分子機構やその細胞レベルでの機能的重要性」の追究に合致する内容である。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度の研究計画を実施するにあたって、研究室に所属機関から配分され、執行上の研究目的が限定されていない運営費交付金で購入した物品を利用することができた。また線虫でのRNAiスクリーニングは想定していたよりも順調にトラブルなく進行した。これらの理由のため、交付申請の時点で想定していた金額よりも少ない研究費で27年度に想定していた研究計画をほぼ予定通りに実施することができ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度も基本的に当初の研究計画に沿った形で研究を進めて行くことを計画しているが、本報告書冒頭の「今後の研究の推進方策」に詳述したように、線虫を用いた解析など、本研究の目的に沿った内容の新たな研究計画にも取り組むことにしている。そのため、当初予定の28年度配分金額(補助金分と基金分を合計して400万円)だけでは十分ではない可能性が高く、27年度に生じた次年度使用額と合わせてこれらの研究計画を実施する予定としており、当初想定していたよりも研究が大きく発展する可能性が高い。
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