前年度まで行ってきた基盤研究で得られた研究成果のうち、他の科研費等で継続して実施することのできなかった部分で、これから大きく発展する可能性が高いと考えられた線虫での関連遺伝子の解析とマウスでの腸上皮の解析を実施した。網羅的RNAiスクリーニングによって、cnnm変異体線虫での生殖巣形成不全をレスキューできる遺伝子として見つかったmct6やdpy23に関しての詳細な解析を進めた。mct6の変異体はリーサルだったので、ライブラリーと別配列を標的にしたRNAiで効果を確認した。また、他の計9個のmctファミリーに関してもRNAiを行い、mct6のみがレスキュー効果を持つことを確認できた。さらに組織特異的RNAiを行うことで、このレスキュー効果が生殖腺体細胞で起こっていることを示す実験結果も得られた。一方、dpy23に関してはcnnmとの多重変異体を作成してその効果を調べたところ、生殖巣の伸展を回復させることができただけでなく、子供もできるようになっていた。これまでに見られない強力なレスキュー効果を示すことが分かった。CNNM-KOマウスの腸上皮で細胞増殖が亢進していたので、各種分化への影響についても詳細に調べた。その結果、内分泌細胞や杯細胞の数が減少しており、腸上皮の増殖と分化のバランスに異常が生じていることが分かった。さらにCNNM-KOマウス由来精子で見られたCa2+流入の異常が腸上皮でも見られるか調べるため、オルガノイド培養系で実験を行ったところ、CNNMを欠損したオルガノイドではカプサイシン刺激応答性のCa2+流入が大きく妨げられていることも明らかとなった。Mg2+恒常性とCa2+シグナルの普遍的関連性を示している可能性がある。
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