研究課題/領域番号 |
26291043
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
古瀬 幹夫 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90281089)
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研究分担者 |
泉 裕士 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10373268)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 上皮 / 細胞接着 / タイトジャンクション |
研究実績の概要 |
1)MDCK II細胞を親株として、アンギュリンファミリーの1つであるアンギュリン1/LSR遺伝子のTALENによる遺伝子破壊を試み、蛍光抗体法によるスクリーニングによって3クローンのアンギュリン1/LSR欠失細胞株を樹立することに成功した。ところが、MDCK II細胞は、TALENによる遺伝子破壊細胞の作製に適する一方で、細胞シートの電気抵抗値がきわめて低いため、上皮バリア機能を細胞シートの電気抵抗値から評価することに難があった。そこで、MDCK II細胞の低電気抵抗値の原因となっているタイトジャンクションの構成分子クローディン2をノックアウトした細胞をTALENにより樹立したところ、細胞シートの電気抵抗が約50倍上昇することを見出した。そこで、27年度は、このクローディン2ノックアウトMDCK II細胞を親株としてアンギュリン1/LSRノックアウト細胞を作製する。 2)本研究の重要な目的の1つであるアンギュリン1/LSR, アンギュリン2/ILDR1の機能差を理解するために、アンギュリン2/ILDR1遺伝子ノックアウトマウスの表現型を解析した結果、このマウスでは、内耳コルチ器のアンギュリン2/ILDR1の欠失をアンギュリン1/LSRの発現が相補するにもかかわらず、高度の難聴が生ずることを見出した。この結果は、トリセルリンを引き寄せる共通の機能以外に、両分子に機能差があることを示唆する。 3)マウスL細胞においてクローディンが形成するタイトジャンクションストランドの形態をトリセルリンが複雑化させる活性について、従来示されていたクローディン1以外に、クローディン2、クローディン3でも同様な変化が生ずることを明らかにした。さらに、トリセルリンのN末端細胞質領域を欠失させた変異分子はクローディン3が形成するストランド構造の複雑化を引き起こさないことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究グループ内で種々の培養上皮細胞を試した中では、細胞シートの電気抵抗値の低いMDCKII細胞がTALENによる遺伝子破壊に適していたが、上皮バリア機能を細胞シートの電気抵抗値で評価するアッセイが今後欠かせない。そこで、MDCKII細胞でアンギュリン1/LSR欠失細胞は取得したものの、一方でMDCKII細胞の低電気抵抗値をもたらすクローディン2をTALEN法で欠失させることにより電気抵抗値を高めたMDCKII細胞を作製し、その細胞の性質を詳細に評価することに時間を要した。また、アンギュリン1/LSRとアンギュリン2/ILDR1の機能差を示唆するILDR1ノックアウトマウスの解析が急を要したため先に進めた結果、培養上皮細胞を用いたTALENによるノックアウト細胞の取得が遅れたが、全体として概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
クローディン2を欠失させて細胞シートの電気抵抗値を高めたMDCKII細胞を用いて、アンギュリン1/LSR, トリセルリンをそれぞれ欠失させた細胞株をTALEN法により樹立し、アンギュリン、トリセルリンの全長および変異分子を導入して、電気抵抗値の評価も含めた上皮バリア機能のアッセイにより、これら分子の機能を評価する。26年度に作製した電気抵抗値の低いMDCKII細胞に由来するアンギュリン1/LSR欠失細胞についても、無機イオンより大きな分子のリークに関するアッセイは可能であり、並行して用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度はTALENによるアンギュリンおよびトリセルリン遺伝子のノックアウト細胞に、種々のアンギュリン、トリセルリンの変異分子を作製、導入するに至らず、分子生物学実験、細胞培養、にかかる消耗品が当初の予定より少なかった。また、異動先の生理学研究所の講座費から、海外出張旅費、人件費を支払うことができたため、当研究費に計上していた同費用を次年度の研究に有効に活用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は26年度に進められなかった培養細胞への遺伝子導入のためのコンストラクト作製、および導入実験を合わせて進めることにより、26年度の残りの研究費を合わせて使用する予定である。
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