研究課題
ミトコンドリアは細胞内で融合と分裂を繰り返しながらその形態を維持しているが、その制御の分子機構及び個体における意義にはまだ不明な点が多い。これまでに、哺乳動物のミトコンドリア融合・分裂を制御するGTPase及びその関連因子を同定・解析することで分子理解を進め、また分裂因子Drp1の欠損マウスを構築することで発生・分化における生理機能を明らかにしてきている。そこでこれまでの研究基盤を基にして、融合・分裂の実行及びその制御の分子機構の更なる詳細解析を進め、また発生・分化、さらにはミトコンドリアの関わる多様な病態の新視点理解を進展させることを目指して研究を進めている。今回、哺乳動物ミトコンドリアの動的構造変化の全容を理解するため、分裂因子Drp1の条件欠損マウスを構築し、組織形成・発生における生理機能を解析したところ、ミトコンドリア分裂の新たな特性を見出すことができた。まず心筋の形成・機能維持におけるミトコンドリアダイナミクスの機能を解析したところ、心形成期にはDrp1の発現量が一過的に極めて高くなること、筋特異的KOマウスを構築すると生後1週間で心筋機能不全により致死となることを見出した。KO心筋では核様体の分布に大きな変化が見られ、その結果、心筋細胞内でのエネルギー供給が不十分となることで新機能不全となることが明らかになった。さらに卵母細胞特異的Creを用いて卵形成・成熟におけるミトコンドリア分裂の機能を解析したところ、雌は不妊となること、卵巣内で卵母細胞が成熟異常となることを見出した。ミトコンドリアのみならずERも大きな構造変化を起こすことから卵子のオルガネラ再編成に重要な機能を持つことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
本申請グループにより作出されたモデルマウスを用いて大きな研究進展が見られまたその公開も進めることができているため。
哺乳動物ミトコンドリアの動的構造変化の全容を理解するため、分子機構と生理機能を両面から解析する。融合・分裂・核様体制御因子の解析に関しては、新規ミトコンドリアダイナミクス因子の同定を行う。既知因子への結合因子群の同定・解析を進め、さらに遺伝子スクリーニングにより関連因子を同定する。ミトコンドリア形態と核様体の形態を同時に観察することで、ミトコンドリア膜ダイナミクスの制御因子と核様体の形成因子の候補を同時に同定することが期待できる。これらの候補因子の中から、当初は特に2重膜を介してmtDNAと分裂を協調させる因子の同定を目指して研究を進める。一方、ミトコンドリア膜融合・分裂の分子機構の詳細解析を行うため、精製蛋白質を用いた解析を進める。ミトコンドリア膜に作用するGTPaseタンパク質群を発現・精製し、膜動態に及ぼす効果を生化学的に詳細に解析する。エネルギー(GTP加水分解による変化)・脂質等の要求性、病態変異の効果など、様々な視点からの解析を行う。
新規因子同定の作業を翌年度に進めることとしたため。
結合因子の同定及び解析を本格的に進める。cDNA・siRNA・抗体等を購入・作成し、それらを用いた詳細解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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