研究課題
ミトコンドリアは細胞内で融合と分裂を繰り返しながらその形態を維持しているが、その制御の分子機構及び個体における意義にはまだ不明な点が多い。これまでに、哺乳動物のミトコンドリア融合・分裂を制御するGTPase及びその関連因子を同定・解析することで分子理解を進め、また分裂因子Drp1の欠損マウスを構築することで発生・分化における生理機能を明らかにしてきている。そこでこれまでの研究基盤を基にして、融合・分裂の実行及びその制御の分子機構の更なる詳細解析を進め、また発生・分化、さらにはミトコンドリアの関わる多様な病態の新視点理解を進展させることを目指して研究を進めている。その中でも、ATPaseドメインを持つミトコンドリア内膜貫通タンパク質、ATAD3はmtDNAや脂質と関連していると考えられているが、その機能詳細は不明な点が多く残されている。今回、ATAD3に結合する因子としてCcdc56を同定した。Ccdc56の発現抑制細胞は、ミトコンドリアネットワークが活性化され、Drp1のミトコンドリア局在性が減少していた。また、ミトコンドリア呼吸鎖複合体IVの不全から、ミトコンドリア形態変化が誘導されていることが明らかになった。これらの結果から、ミトコンドリアの活性と形態制御の関係の一端が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
今回、ミトコンドリアの動的構造変化の全容を理解するため、新規因子を同定しその分子詳細を解析したところ、ミトコンドリア形態制御の新たな知見を得ることができた。我々はミトコンドリアの機能と形態維持に重要な機能を持つ因子、ATAD3について解析を進めている。ATAD3はATPaseドメインを持つミトコンドリア内膜貫通タンパク質であり、mtDNAや脂質との関連が報告されている。今回、ATAD3に結合する因子として新たにCcdc56を同定した。Ccdc56はミトコンドリア内膜に局在し、内膜を貫通して存在していた。Ccdc56の遺伝子発現抑制を行ったところ、ミトコンドリア形態の大きな変動が見られた。この細胞では、ミトコンドリアが長くなりネットワーク構造が活性化されていた。そこでミトコンドリア分裂に機能するGTPaseであるDrp1を観察したところ、そのミトコンドリア局在性が減少していた。このCcdc56の抑制細胞では、ミトコンドリア呼吸鎖複合体IV (COX)のアセンブリーが不全となっており、それがミトコンドリア形態変化を引き起こしていることが分かった。これらの結果から、ミトコンドリア呼吸鎖形成とミトコンドリア形態制御は関連していることが明らかになった。また、これらの分子解析に加えて、マウス遺伝学的解析を行い、神経・心筋・肝臓等におけるミトコンドリアダイナミクスの意義の理解を進めることができた。
哺乳動物ミトコンドリアの動的構造変化の全容を理解するため、分子機構と生理機能を両面から解析する。融合・分裂・核様体制御因子の解析に関して、新規ミトコンドリアダイナミクス因子の同定を行う。特に、遺伝子スクリーニングにより関連因子を同定する。ミトコンドリア形態と核様体の形態を同時に観察することで、ミトコンドリア膜ダイナミクスの制御因子と核様体の形成因子の候補を同時に同定できる。すでにスクリーニングは進行中であり、特に2重膜を介してmtDNAと分裂を協調させる因子の同定を目指して引き続き研究を進める。一方、ミトコンドリア膜融合・分裂の分子機構の詳細解析を行うため、精製蛋白質を用いた解析を進める。ミトコンドリア膜に作用するGTPaseタンパク質群を発現・精製し、膜動態に及ぼす効果を生化学的に詳細に解析する。特に膜脂質がどのように機能するか、またその要求性など、多面的な方向からの解析を行う。
引き続きマウス飼育・解析、関連因子スクリーニング・解析、及び生化学的解析を進めるため。
上記の研究を進めるための消耗品・試薬・備品等を購入し、また研究成果をとりまとめ発表・報告するための旅費等に使用する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)
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