研究課題
パルミトイル化修飾は多くのシグナル蛋白質や膜蛋白質にみられる代表的な脂質修飾であり、蛋白質を特定の膜ドメインに輸送し、その局在や機能を制御する。パルミトイル化は他の脂質修飾とは異なり可逆的であり、リン酸化修飾と同様に、外界刺激に反応して細胞機能をダイナミックに制御している。近年、私共は哺乳動物においてパルミトイル化酵素群を世界に先駆けて単離し、様々な基質蛋白質に対する責任酵素を同定し、それらの生理機能と制御機構を明らかにしてきた。一方、パルミトイル化脂質修飾が発見されて35年以上を経ても、脱パルミトイル化反応を担う“真の責任酵素”は未だ明らかになっていない。本研究では1脱パルミトイル化酵素を探索、同定し、2その生理機能を明らかにして、パルミトイル化修飾機構の全容解明を目指す。今年度は、当初の研究計画を着実に遂行し、下記のような成果を得た。私共は、脱パルミトイル化酵素がセリン加水分解酵素に属することに基づき、ラットおよびマウスの脳組織から38遺伝子を脱パルミトイル化候補酵素として単離し、遺伝子ライブラリーを作成した。次に、 [3H]パルミチン酸を用いた代謝ラベル法により代表的なパルミトイル化蛋白質であるPSD-95に対する脱パルミトイル化酵素活性を評価し、6個のPSD-95脱パルミトイル化酵素候補遺伝子群を得た。さらに、放射性同位元素を用いずに蛋白質パルミトイル化のストイキオメトリーを定量する手法を開発し、上記の脱パルミトイル化酵素候補遺伝子の酵素活性を簡便に定量的に測定することを可能とした。このように、本研究では当初の計画を順調に進め、予想以上の進捗と成果を得た。
1: 当初の計画以上に進展している
蛋白質パルミトイル化のストイキオメトリーを簡便に定量的に測定することができる新しい手法を開発したため。
1)脱パルミトイル化酵素の基質特異性、活性制御機構の解明平成26年度に単離・樹立した脱パルミトイル化酵素遺伝子ライブラリーと平成26年度に確立した放射性同位元素を用いずに蛋白質パルミトイル化のストイキオメトリーを定量する手法を用いて脱パルミトイル化酵素の基質特異性、酵素学的特性(分子活性、反応速度等)の詳細を明らかにする。2)細胞レベルの脱パルミトイル化酵素の生理機能6つの候補遺伝子の中から海馬神経細胞における生理的なPSD-95脱パルミトイル化酵素を同定し、その生理機能を明らかにする。
事務上の支払い手続きが4月以降になったため。
生じた次年度使用額は4月以降に支払われる予定であり、使用計画に変更はありません。
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