研究課題
パルミトイル化修飾は多くのシグナル蛋白質や膜蛋白質にみられる代表的な脂質修飾であり、蛋白質を特定の膜ドメインに輸送し、その局在や機能を制御する。パルミトイル化は他の脂質修飾とは異なり可逆的であり、リン酸化修飾と同様に、外界刺激に反応して細胞機能をダイナミックに制御している。近年、私共は哺乳動物においてパルミトイル化酵素群を世界に先駆けて単離し、様々な基質蛋白質に対する責任酵素を同定し、それらの生理機能と制御機構を明らかにしてきた。一方、パルミトイル化脂質修飾が発見されて35年以上を経ても、“脱パルミトイル化反応”を担う“真の責任酵素”は未だ明らかになっていなかった。本研究では1)脱パルミトイル化酵素を探索、同定し、2) その生理機能を明らかにして、パルミトイル化修飾機構の全容解明を目指した。平成28年度は、平成27年度までに絞り込んでいたPSD-95脱パルミトイル化酵素候補の中からABHD17A、17B、17Cが生理的な脱パルミトイル化酵素であることを示し、論文として発表した(Yokoi, Fukata Y et al, J Neurosci 2016)。また、私共は独自に開発したAPEGS法(蛋白質のパルミトイル化のストイキオメトリーを評価できる手法)により、初めて内在性PSD-95の大部分が2カ所でパルミトイル化修飾を受けていることを見出した。さらに、ABHD17を過剰発現させることにより、PSD-95のパルミトイル化レベルが激減することを明らかにした。細胞生物学的手法でも同様に、ABHD17を過剰発現させると、PSD-95のシナプス局在が大幅に減少することを見出した。最後に、ABHD17A、17B、17Cのノックダウンにより、PSD-95の脱パルミトイル化の半減期が大きく遅延することを見出した。このように、私共はPSD-95脱パルミトイル化酵素の同定に成功し、新たなシナプス後膜ナノドメインの制御因子を見出した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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http://www.nips.ac.jp/fukata/