研究課題/領域番号 |
26291046
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大隅 典子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00220343)
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研究分担者 |
稲田 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60419893)
吉川 貴子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90727851)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 放射状グリア / mRNA輸送 / FMRP / Cyclin D2 |
研究実績の概要 |
胎生期における哺乳類大脳皮質の構築過程において、神経前駆細胞として働く放射状グリア(RG)細胞は、脳室面から脳表面(basal側)まで達する長い突起を有する。本研究では、このような極性の強い神経前駆細胞内において、どのようにして核から遠く離れたbasal側までmRNA分子が輸送されるのか、そのメカニズムについては明らかになっていない。本研究は、大脳皮質原基におけるmRNAのRG細胞basal側への輸送現象に着目し、哺乳類型脳構築過程の基本原理解明を目指すものである。 神経細胞内のmRNA輸送では、微小管がレールとなり、その上を移動するキネシン等の各種モータータンパク質が、自閉症関連因子であるFMRP(脆弱性X症候群タンパク質)等のRNA結合タンパク複合体を介して、細胞の樹状突起側もしくは軸索束にシナプス分子mRNAを長距離に輸送することが知られている。平成27年度において、RG細胞のbasal側におけるFMRPの局在を見いだした。さらに、RNA結合タンパク側からのアプローチ(RIP-ChIP法)によって大脳皮質においてFMRPが結合するmRNAを網羅的に探索し、FMRP標的mRNAについて解析中である。さらに我々が明らかにした大脳皮質RG細胞 basal側へと輸送される細胞周期因子Cyclin D2が、前述したFMRPが共局在することを見いだし、神経前駆細胞内mRNA長距離輸送メカニズムの一旦を明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、大脳皮質を構成する放射状グリアの基底膜側(basal側)において、RNA結合タンパク質FMRPの局在を見出すことができ、またRIP-ChIP法について、ゲノム支援のフレームワークを利用してFMRPが結合するmRNAの網羅的探索を行いつつある。さらに、CRISPR/Cas9法によりCyclin D2のmRNA輸送配列に特異的な変異を挿入する実験系についても予備検討を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
RIP-ChIP法によって探索したFMRPの標的mRNAについては大脳皮質原基全域を用いているため、basal側領域のみの標的mRNAを探索する必要がある。そこで、レーザーマイクロダイセクション装置によるbasal側領域のみを切り出してRIP-ChIP法を行う。さらに、同定した候補mRNAの大脳皮質における局在パターンについてin situハイブリダイゼーション法により確認する。 我々はCyclin D2のmRNA配列の中でRGsのbasal側への輸送に特異的で必要十分な約50 bpの配列を既に見いだしている(Tsunekawa et al., EMBO J, 2012)。そこで、このユニークなbasal側mRNA輸送配列に結合しうるRNA結合タンパク質を、RiboTrap法により探索する。さらに、このCyclin D2 mRNA輸送配列に変異を入れたマウスをCRISPR/Cas9法により作製中であり、Cyclin D2輸送が胎生期大脳皮質の神経細胞分化を担う可能性について検討する。
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備考 |
本プレスリリース(日英)は、哺乳類大脳皮質形成のメカニズムの一端を脂質脳科学の観点から明らかにしたStem Cells誌の論文をもとに東北大学より為された。本基盤B研究を推進する上で重要な知見が得られた・
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